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「やりたいことではなく、やるべきことをやる、それが仕事」(テスラ モーターズ・土肥亜都子)――古川享が聞き出す 今を駆けるスマート・ウーマンの本音

林 正愛 [アマプロ株式会社社長]
【第8回】 2013年2月5日
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Photo by Jungae Lim

土肥:やるべきことを積み重ねていく、ということにつきると思います。“やりたいこと”ではないのです。自動車業界の広報としてはまだまだ新米ですし、試行錯誤が続きます。とりあえず最近は、モデルSという4ドアセダンがアジア各国にロンチし、今春には中国に進出するので、おかげさまでその対応に追われています。

 一方で、所属してきたグローバルカンパニーの創業者は、それぞれが、世界中の“人々”にどう貢献したいかという視点を持っていることに高い関心を持っています。ビル・ゲイツさんは「世界中のデスクと家庭にパソコンを」、ラリー&サーゲイは「世界中の情報を整理して、誰もがアクセスできるよう」、マスクは「石油依存から再生可能なエネルギー社会への移行」が信条です。それらのイノベーションを支える世論を、メディアやジャーナリストの皆さんと一緒に生み出していければ、広報人として幸せです。

古川:最後に、私に聞いてみたいことはありますか?

土肥:大学院で先生をされていますが、どういう人材を育てたいと思っていますか。

古川:一番大事なのは、自分自身が何を信条に生きていけばいいのかということ。それを社会に出る前に自分自身のライフワークとして取組むビジョンを描いてほしい、そのためのきっかけを作ってあげたいと思っています。

 僕自身は、25歳の頃に自分のビジョンステートメントを「月刊アスキー」にコラムとして書いています。この先、マイコンがパソコンになって個人と仲良しになっていくが、そのパソコンがネットワークにつながっていないと、そのパソコンユーザーとコンピューターが社会から隔絶してしまう。それを避けるには、パソコンがすべてネットワークでつながっていて、そこに人間同士がつながっている状態ですと。さらに、ネットワークに接続されたパソコンやデバイスの存在を意識しなくなる状態が一番心地よいと。

 その時に必要なのは、マスメディアとパーソナルメディアの間に存在する新しいメディア。それは双方向性があり、メッセージの受信者、発信者が自由に入れ替わって、痛みや喜びを共有できて、時間軸などを超えた新しい人間関係がつくれる。そうした環境で育った人間の発想はフレキシビリティを持ち、国境や男女間の壁や距離感などを超えた人間関係をつくれるのではないか。そうしたことを25歳のときに書いています。

 アスキーにいたことも、マイクロソフトにいたことも、そのビジョンを実現するための過程でしかなくて、最後にそれを実現するのに一番近い場所は、教育の場で残りの人生を過ごすことかなと思いました。

土肥:なるほど。マスクも大学生のときに「インターネットと宇宙とエネルギーに従事したい」と決めたそうで。成功サンプルとしてご教材にぜひ(笑)。

 若者は私たちの時代より頭が進化しているし、デバイスもあるし、知識も豊富。あとはそのおっしゃるところの信条と世界を見渡す視点ですね。ぜひ慶應の学生さんには、世界に対して、どうしたいという思いが強ければ、世界中の人が使うサービスが実現できるということを伝えてほしいです。

古川:世界を俯瞰する視点、とても大切ですね。貴重なお話をありがとうございました。

土肥さんの話を聞いて――林正愛

 インタビューでお話を伺いながら、家事手伝いから名だたるグローバル企業へと、シンデレラストーリーのような話だなーと思いました。ただ、さらりと話されるその背後には、絶え間ない努力が隠れているようにも感じました。“やりたいこと”ではなく、“やるべきこと”を積み重ねることが大切というのはとても心強く、だからこそ、多くの人に評価され、キャリアを積まれてこられたのだと思います。

 与えられた中でしっかりと成果を残し、信頼を勝ち取り、進んでいく。女性ならではのキャリアの歩み方かもしれませんが、自分自身もその姿勢を身につけていきたいと感じたのでした。

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林 正愛
[アマプロ株式会社社長]

りん・じょんえ/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社、日本経済新聞社にて、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。2児の母。

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