出張で中国の南の島・海南島に来ている。滞在期間中に、中国が自主開発した大型軍用輸送機「Y20(運20)」が、陝西省西安で初めての試験飛行に成功したというニュースが届いた。メディアの報道によると、鯤鵬(鯤は大魚、鵬は大鳥の意)という愛称の同機は、最大積載量66トンで、最大離陸重量(その飛行機が離陸できる総重量の最大値)220トン、航続距離7800キロ、最高速度は時速700キロ、という。200トン級の大型輸送機の開発は米国、ロシア、ウクライナに次いで4ヵ国目になる。

 西安飛機工業公司(略称は「西飛」)が開発したこの大型軍用輸送機の初試験飛行の成功は、すでに進行中の中国の大型旅客機の開発に弾みを大きくつけるだろう。

航空機の輸出に
心血を注ぐ注ぐ中国

 中国の製造業は人件費の高騰と欧米市場の景気低迷により、厳しい試練に直面している。安かろう悪かろうの製品を作る時代はこれ以上継続が困難になり、製造業のレベルアップが求められている。航空製造業の発展は中国の製造業の変身を力強く促す刺激にもなる。

 あまり知られてはいないが、実は中国はここ十数年、飛行機の開発・製造に力を入れるだけではなく、その輸出にも大きく心血を注いでいる。

 今から数えると、11年前の2002年12月7日付朝日新聞に、私は「飛びあがる航空機産業」として、当時は開発に成功したばかりの最新型国産戦闘機J10と輸出用に開発された新鋭戦闘機FC1を取り上げた。今や米国製のF16戦闘機をすでに擁しているパキスタンは、FC1を次世代の主力戦闘機にすることを決めてしまった。

 実は当時から、中国の航空機産業はすでに輸出に力をいれている。航空工業第二集団は、1999年末にエジプト空軍と、訓練用機K8Eとその生産技術を輸出する契約を結び、これまでに45機を引き渡した。中国にとって初の、航空機製造技術の海外移転だった。当時の時点で、同集団は24ヵ国にK8Eなど合計717機を販売した。飛行機の輸出はすでに中国航空機産業を支える重要な一部となった。