ポストM&Aを成功に導くために

 クロスボーダーM&Aの成功を考える上で、ディールの成立とともに重要視されるべきは、買収後の経営(ポストM&A)や日本企業のグローバル化である。ここでは、従来のPMI(Post・Merger・Integration)という言葉に対して、「Post・Merger・Innovation(イノベーション)」という新たな意味合いを提起したい。

 買収後の経営の目的はIntegrationではなく「価値を生み出す」ことが最上位に来るべきもので、異なる企業同士が葛藤を越えて融合を果たし新たな価値を生み出すプロセスはまさにイノベーション(Innovation)そのものだ。実務的には、買収後に対象先経営への関与を通して、1.対象会社の価値(スタンドアロン価値)向上、2.両社によるシナジー価値の創出、の両面から価値を生み出していくプロセスがPMIである。

 また、クロスボーダーM&Aの成功には、単に被買収側のマネジメントだけでなく、日本企業自らがグローバルに向けて変わることが必要だ。そこで、M&Aを通した日本企業によるグローバル経営を実践するコンセプトとして「複合経営」という融合的アプローチを提唱したい。

 これは、単一的な「型」に相手を合わせさせるのではなく、日本の企業が持っている良いところを生かしながらも、買収先の企業の優れた制度や現地の人の力を最大限に活用して、お互いの良いところを取捨選択して合わせていくというアプローチだ。詳しくは、『クロスボーダーM&A 成功戦略』をご一読いただきたい。

 今や、日本企業にとって、クロスボーダーM&Aは重要な戦略実現のツールになりつつある。クロスボーダーM&Aの成功件数の増加により、世界での日本のプレゼンスを高め、日本経済に新たな活気と一層の躍動がもたらされることを願っている。


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