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第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由

カネの切れ目が、縁の切れ目に・・・。会社再建後、「お払い箱」にされた元銀行マンの油断

――再建先で、最後は“よそ者”として排除された石井氏のケース

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第18回】 2009年4月13日
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 銀行と企業の関係は、切っても切れない。とくに、経営基盤が弱い中小企業からすると、銀行との関係悪化は死活問題。中には、経営再建のため、銀行から役員を送り込まれることもある。銀行は、頼りになると同時に、厄介な存在だ。

 今回は、メインバンクから、経営建て直しのために送り込まれた元銀行マンが、再建のメドが立ったとたん、お払い箱にされていく姿を紹介する。

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■今回の主人公
石井 陽光(仮名、56歳男性)
勤務先: 都内に本社を構える、福祉機器メーカー(従業員260人)。財テクの運用に失敗し、経営難に陥る。そこで、メインバンクのZ銀行から、役員として送り込まれたのが石井氏。数年後、彼の手腕により経営再建のメドが立ったが、会社は新体制を模索し始めた。石井氏の周囲で不穏な動きが……。
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(※この記事は、取材した情報をプライバシー保護の観点から、一部デフォルメしています)

寝耳に水の「人事異動」

 石井は、自分の耳を疑った。

 「私が総務担当に……?」

 社長の神保(59歳)は、軽くうなずいたあと、淡々と答える。

 「通常の異動だ。銀行でも行なわれていることだろう?」

 「……」

 石井は、言葉が出てこない。

 春の人事異動の時期だからか、隣の部屋では歓送迎会が行なわれているようだ。ときおり、拍手や笑い声が聞こえてくる。それとは対照的に、この部屋は重苦しい雰囲気に包まれていた。

 10分ほどすると、ふすまが開いた。女将の案内で部屋に入ってきたのが、総務担当役員の千川(58歳)だ。千川は社長に軽く会釈をしたあと、「どうも」と石井に小さく声をかけた。

 社長が、再び話を始めた。

 「6月の株主総会の前に、組織を新体制にしたい。管理職をたぶん20人前後は動かすから、例年よりも大規模な異動になる」

 千川が、あいづちを打つ。石井は悟った。社長と千川は、すでにこの件について話し合いをしたに違いない、と。

 社長が話を続ける。

 「そこで、まずは役員を異動させる。6人の役員のうち、君たち2人が交代してもらうことになる」

 「……」

 社長は、背広を脱ぎながら話を続けた。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由

会社から冷遇され、気がつくと「負け組」となってしまった人たちを毎回取材。彼らの実体験を振り返ることで、企業の冷酷さだけでなく、自己防衛できなかった敗因を分析。第2次リストラ時代で生き残る術を探る。

「第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由」

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