今年10月1日にも予定されている新生銀行とあおぞら銀行の経営統合交渉が難航している。一部には合併延期の観測も流れるが、合併自体が破談になる可能性もにわかに高まっている。背景にあるのは、年をまたいで現在も継続中の金融庁の検査だ。統合交渉の現状を追った。

「大事なことがまったく決まっていない状態が続いている。なんとかして早く決着をつけようと思っているが、10月1日を目標にするよりも、よりよい合併にすることを(優先して)考えている」

 2月4日、新生銀行の八城政基会長兼社長は、10月1日にも予定されているあおぞら銀行との合併について、アナリストに対しこう釈明した。

 両行は昨年7月、合併比率1対1の対等合併で経営統合することに合意。現在まで両行の社長を共同委員長とする統合委員会を設置して、月に1~2回、業務や部門の統廃合といった合理化や、今後の戦略づくりを進めてきた。

 ところがである。委員会での話し合いが昨年11月以降、完全に膠着状態に陥る。八城社長率いる新生側が突如、態度を豹変させたからだ。

 それまでの委員会でも新生側は、「政権が変わったのだから合併しても仕方がない」「2度目の公的資金はもらえないから合併は無理」といった否定的な発言を繰り返すなど、合併には消極的だった。

 それでも、合併後のトップ含みで顧問に就任していた足利銀行前頭取の池田憲人氏を交えて話し合いは進み、合併に向けた一定の方向性は固まりつつあった。それが、急に具体的な話については口をつぐみ、非協力的になったという。

「自分たち主導で、あおぞらをのみ込めると思っていたフシがあった。それが池田さんの登場で、統合後のビジネスモデルがあおぞら型になることが、ちょうどその頃濃厚になりつつあり、それに反発したのではないか」(関係者)

 あおぞらは、最近でこそ不動産や事業再生などの分野に注力していたが、もとは余資運用を担うなど地方銀行とのパイプを生かしたビジネスを得意としてきた。横浜銀行、そして足利銀行の再生を果たしてきた池田氏が、そうした地銀とのビジネスを復活させようと志向するのは必然の流れだった。

 それが新生には我慢ならなかった。ここ数年、アプラスやレイクなど相次いで買収したカードや消費者金融を柱に据えたリテール分野に力を入れてきた新生は、業界自体が沈みかけているにもかかわらず、「これからはコンシューマーファイナンスの時代だ」と大見得を切ってきたからだ。