2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけられるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。今回は、調査会社BCNのエグゼクティブアナリスト、道越一郎氏にデジタル家電市場の動向について聞いた。

機種が揃った7インチタブレットが情報端末の主役に!<br />スマホ一辺倒からフィーチャーフォンの巻き返しも!<br />――道越一郎・BCN エグゼクティブアナリスト みちこし・いちろう
BCNエグゼクティブアナリスト/ランキングデータ・メディア部 部長
早稲田大学法学部卒。1989年、株式会社日本リサーチセンター入社。2005年、株式会社BCN入社。PC・デジタル家電ランキングサイト「BCNランキング」編集長を経て、09年に現職。POSデータベース事業「BCNランキング」、フリーマガジン「BCNランキング」、Webサイト「WebBCNランキング」などの制作を統括。また、BCNランキングデータを用いた市場分析を行うアナリストとしても活動。

①タブレット端末の台頭がビジネスモデルをも変える

理由:これまで、アップルのiPadの独壇場だったタブレット市場。しかし2012年10月、GoogleとASUSが2万円を切る破格の安さで投入した7インチタブレットNexus7が大ブレイク。加えて11月にはアップルがiPad mini(7.9インチ)、12月にはアマゾンがKindle FilreとKindle Fire HD(共に7インチ)を相次いで発売。7インチ台タブレット市場が大きく動き始め、新たな局面に入った。

 BCNランキング(※1)では、それまで10%台後半だったPC全体に占めるタブレット端末の販売台数構成比(Kindle除く※2)は、11月に30%を超え12月には32%を記録。12%のデスクトップの実に倍以上の構成比を占めるまでに成長した。2013年はこの傾向は続くものとみられ、Webやメールの閲覧など、いわゆる「情報消費型」の用途に関してはPCからタブレットへの移行が進みそうだ。

 Windows系のタブレットもRT搭載モデルの登場で徐々に拡大していくものと考えられ、ノートやデスクトップといった旧来型のPCの領域を侵食していく可能性が高い。同時に、PC全体のビジネスモデルも、単純なハードの販売モデルから、格安のハードで広げたプラットフォームを軸に、接続料や利用料、アプリの販売で収益を得るモデルへのシフトが加速しそうだ。

(※1)全国の主要家電量販店やカメラ量販店などのPOSデータを収集・分析する実売データベース
(※2)販売実績が非公表なため