株式レポート
2月12日 18時0分
マネックス証券

止まらない円安〜それを邪魔するメディアの報道を見極めろ〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

ドル円相場は、2月12日早朝1ドル94円台半ばまで円安が進んだ。先週末(2月8日)午後の東京時間に、麻生財務相による「為替がわれわれの意図せざるぐらいに円安に振れた」(時事通信)との発言が伝わると、ドル円相場は92円台半ばまで円高になっていたが、今週、再び円安に弾みがついている格好である(グラフ参照)。


円安に転じたのは、日本の祝日(2月11日)の夕方からだった。中国の春節でアジア市場が休場で薄商いの中、まずドル円は93円台半ばまで円安に戻った。特段、材料があったわけではないが、次期日銀総裁候補の一人として挙げられている黒田アジア開発銀行総裁が、ブルームバーグ社とのインタビューで「今のところ、行き過ぎた円高からの自然な調整だ」と発言したことなどが材料になったとみられる。

その後、11日のNY時間の夕方頃(東京時間12日未明)に、ブレイナード米財務次官が、「金融・財政政策は国内問題に起因すべきで、それが各国が成長を達成する最善の方法だ」「我々はそうしたアプローチを支持する」(日経WEB)との発言が伝わり、ドル円相場は94円台半ばまで円安となっている。

なぜこれが材料になったのか?それは、今週行われるG20の前に、主要7カ国(G7)によって為替に関する声明発表が行われるとの報道が流れ、市場では「通貨安競争」に関する思惑が広がっていたことである。例えば、1月末にドイツのメルケル首相が、日本を名指しする形で批判していた。こうした中での、ブレイナード米財務次官の発言は、アベノミクスで金融緩和政策の強化を目指し、その結果円安(=円高是正)が起きている日本の現状を、側面支援する発言として受け止められた。

1月25日のレポートでは、ドイツのメルケル首相の発言や、日本の政治家による為替市場の水準への言及(足をすくわれるだけ)、が不適切であること、そして、ブランシャールIMFチーフエコノミストが、「通貨競争に関する議論は誇張されたもの」などの、至極真っ当な発言を行っていることを紹介した。

今回のブレイナード米財務次官の考えも、ブランシャール氏のような米国の経済学者などの真っ当な考え方が前提になっている。日本は、為替市場への介入などを行わず、「脱デフレのために金融緩和を強化する」という、当たり前の政策を行っているだけで、ドイツなどからの雑音がおかしいだけ、ということである。

なお、日経新聞などの日本のメディアをみると、依然としてアベノミクスに対して意味不明に批判的な記事が散見される。同じ文脈で、アベノミクスへの期待がもたらした円安が、国際社会の批判を巻き起こしたことを、大げさなことにように報じている。しかし、「金融緩和強化によってデフレ脱却を目指す」過程で起きている円高是正は、標準的な経済理論に基づけば当然の動きであり、他国に非難される筋合いなどは全くない。

こうした意味で一部のメディアは、すっかりアベノミクスへの抵抗勢力と化しているようだ。言うまでもないが、こうしたメディアの駄論を真に受ける投資家は、これまでのアベノミクス相場にも、ついてこれなかった。今後、投資でのパフォーマンスを向上させるには、これらの抵抗勢力が垂れ流す情報の意味を、自分の頭で正確に理解する必要がある。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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