株式レポート
2月12日 18時0分
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想い出にかわるまで - 広木隆「ストラテジーレポート」

だからいいかルフィ おれ達は絶対に〝くい〟のない様に生きるんだ!!!
(ポートガス・D・エース『ONE PIECE(ワン・ピース)』)

4つのものは帰ってこない。口から出た言葉。放たれた矢。過去の生活、そして失った機会。
(アラブのことわざ)

失ってはじめてわかる
『想い出にかわるまで』(TBS)というドラマが放映されたのは、1990年の第1クール(1-3月期)であった。主人公役の今井美樹は、石田純一演じるエリート商社マンと結婚の約束をしていた。ところが、ちょっとしたすれ違いから結婚を延期する間に、妹(松下由樹)が姉の婚約者・石田純一を奪ってしまうという、トンデモないストーリー。どろどろの愛憎劇であった。

ちなみに、実生活では今井美樹が布袋寅泰を山下久美子から不倫の上に略奪婚、松下由樹は8年間交際して結婚目前だった音楽プロデューサーの小林武史をMY LITTLE LOVERのボーカル、AKKOに奪われるなど、役柄とはお互いに全く逆の私生活を歩むことになる(ウィキペディアより)。現実は皮肉であり、「事実は小説より奇なり」だ。

そして石田純一はと言えば、『抱きしめたい!』(フジテレビ)など多くのドラマに出演し、トレンディー俳優としての地位を築いていた。『想い出にかわるまで』の放映終了直後には当時の妻・松原千明との間に女児が誕生するなど、幸せの絶頂にあったに違いない。しかし、翌年から少しずつ歯車が狂い始める。91年には隠し子騒動が勃発。その子がいしだ壱成である。石田純一の名前を世間に広めた騒動と言えば、モデル・長谷川理恵との不倫交際をマスコミに追いかけ廻されて吐いた台詞、「不倫は文化」発言だろう。言葉が独り歩きした感もあるが、激しいバッシングが巻き起こり、石田のトレンディー俳優としての仕事は激減、私生活でも妻子と別れ、バブル時代の栄華とは一転、不遇の時代を送ることになる。

それにしても、石田純一はさすがにバブル期を代表するトレンディー俳優だけに日本経済のバブルの帰趨と、ご自身の栄衰がみごとなまでにリンクしている。『想い出にかわるまで』が放映されたのは、1990年の第1クール(1-3月期)、まさに株価がピークをつけた直後なのだが、その時はそこが天井だなんてだれにも分からない。むしろバブルの余韻に社会全体が浸っていた時期だ。バブルは、弾けてみてはじめてバブルだと分かる。幸せも失ってはじめて分かるものだ。そして人は言う。「あのころは良かった」と。石田純一も、きっと何度も思ったことだろう、あの頃は良かったと。

辛い現実を月日が解決してくれることもある。過ぎてしまえば、「想い出に変わって」しまえば、美しいことしか残らない。しかし、想い出に変えてしまっては良くないこともある。「あの頃は含み益がいっぱいあって良かった。儲かっている銘柄ばかりで良かった」なんて、想い出にしては良くないのだ。想い出に変わるまで、引っ張っていけない。想い出に変わる前に手を打とう。

利食い千人力とドローバック
どんな大相場でも調整はある。市場全体やそれを表す指数が深く押さなくても、個別銘柄ベースでは結構な調整となることがある。「見切り千両」「利食い千人力」という格言が示す通り、株式投資においては「売ること」が非常に重要であるが、同時にまた、うまく売るのはとても難しいものである。

下げ相場における「落ちてくるナイフをつかむな」という格言はあまりにも有名だが、上げ相場でも同じである。「飛んでいる矢をはたけない」 ― これは僕の造語であるが、「落ちてくるナイフをつかむな」の逆バージョンだと思って欲しい。どうしたら、できるだけ早売りしてしまうリスクを軽減しながら、利益を引っ張ることができるだろうか。

僕のバックグラウンドはポートフォリオ・マネージャーだ。銘柄選択や業種配分でベンチマーク対比のアルファ(付加価値)を獲得することが主たる業務の目的だった。ヘッジファンドのマネージャーや、特殊なマンデート(顧客から委託された権限)を除いて、一般にポートフォリオ・マネージャーはマーケット・タイミングで勝負しない。よって、僕は利益確定タイミングについて、偉そうなことを言える立場にない。ここは、その道のプロの知恵を拝借しよう。ソロモン・ブラザーズやゴールドマン・サックスでトレーダーとして鳴らしたマネックス証券社長・松本大はこう述べている。
「優秀なプロトレーダーは『損は早く切る。儲けは、できる限り上に引っ張る』というやり方を徹底しています。具体的にいうと、利食いと損切りの比率を『3対1』くらい(場合によってはそれ以上)に設定しています。」
(松本大著『「お金の流れ」はこう変わった!松本大のお金の新法則』ダイヤモンド社)

そして「ドローバック」と呼ばれるテクニックを使って、利益をさらに伸ばすやり方を紹介している。例えば「利食い15%、損切り5%」に設定した場合、買値から15%上昇し利食いポイントに到達しても、即座に利益確定せずにしばらく様子を見るやり方だ。ここで重要なのは、利食いポイントを割り込んだ場合、どこで見切りをつけて最終的に利益確定するかというルールを決めておくことである。例えば、それまでの最大儲け幅の20%までの押し目は許容する。その代わり、最大儲け幅の20%を割り込んだら、そこで見切りをつけて利食う、というようなルールである。こうすることによって、最大儲け幅の20%の範囲内で反転上昇した場合、持ち続けることができる。上げ相場から早く降りてしまうことを避けることができるのだ。

個々人で買値が違うし、銘柄によって底値もまちまちだから、「最大儲け幅」というのを一律に定義はできない。そこで、あくまで参考として、今回の「アベノミクス・ラリー」の起点となった昨年の衆院解散宣言の日、11月14日からの上昇幅に対して、先週末時点でどれだけ調整しているかというのを調べた。日経平均の値動きを例にとれば、

8,664円(11/14) → 11,463円(2/6) → 11,153円(2/8)

だから、2,799円の上昇幅に対して、高値からの調整幅は310円、率にして11%である。これは上述のドローバックの例で言えば、20%の押し目に抵触していないので、ポジション維持の判断に該当する。

銘柄リスト
日経平均を構成する225銘柄について、11月14日からの上昇幅に対する先週末時点の調整率を計算するのに、大きく2つのグループに分けた。ひとつは直近の高値が52週高値を抜いているもの。代表例がトヨタなどである。これをタイプAとする。もうひとつは、直近の高値が52週高値をまだ抜けていないもの。こちらの代表例はソニーであろう。これをタイプBとする。




225銘柄のうち、直近の高値が52週高値を抜いたタイプAは全体の約6割に当たる141銘柄ある。タイプBが84銘柄である。タイプAで、既に半値押し(上昇幅に対して50%下落)まで売られた銘柄は8銘柄、タイプBでは12銘柄ある。こうした銘柄群は既に利益確定売りのタイミングを逸してしまっている。ニコン、アドバンテスト、ヤマハ、大日本住友製薬などは上昇率が50%を超える大幅上昇だっただけに、その反動も大きく出た。ニコンの場合は、決算発表で大幅下方修正というネガティブ・サプライズがあり、500円安のストップ安をつけ、1日で約2割も下げたからどうしようもなかったとは言え、仮に20%押しで利益確定するというドローバック・ルールを設定していれば、この急落は避けられていた(グラフ赤丸参照)。「たられば」の話をしたところで、どうしようもないが、これからの参考になれば、と思う次第である。



(※表はクリックして拡大できます)

ドローバックの基準で「儲け幅の20%」というのはあくまでも目安に過ぎない。30%まで我慢してもいいし、フィボナッチ級数の23.6%(上げ幅の76.4%を割り込んだら売る)というのを使ってもよいが、だいたい2〜3割を基準にするのが妥当なところだろう。
その意味で利益確定を検討すべき銘柄群は以下の通りである。タイプA、Bともに上げ幅に対して調整率が20〜30%に及んできているものを以下にリストアップした。参考にして欲しい。



これとは逆に、全然調整していないもの、高値追いが続いているものがグループ3である。今回の相場でもっとも勢いのある銘柄群である。これらの銘柄群の多くが変調をきたしてきたら、ラリーも一旦は収束と考えるべきだろう。



これまで何度も述べているように、今回の上昇相場は、日本の金融政策の大転換とそれによるデフレ脱却期待というものを背景に、大相場に発展する可能性が大きい。過去のレポートで示した通り、日経平均の上値は14,000円程度があってもまったくおかしくない。ただ、前述したように、どんな大相場でも調整局面はあるし、株価指数が深く押さなくても、個別銘柄ベースでは結構な調整となることがあるのだ。こまめに利益確定をする重要性を改めて認識してほしい。

え? 2012年12月25日のレポート「You Can't Harry Love 恋は焦らず」で、じっくり焦らず、と言ったじゃないかって?割安な銘柄を仕込み、その割安さが修正されるのを待つというのは投資の基本だが、時と場合による。これだけ相場が大きく動いてきているのだ。投資も恋愛も、ここ一番という勝負どころでは、積極果敢に動くべきである。

「キスしていい?」なんて上品ぶっているとチャンスを失う。
「ごめん。我慢できなかったんだ。」 これが正解。

なあに、裏目に出てもたかが知れている。投資において早めの利益確定が裏目に出るのは、売った株が更に上値を追うケース。しかし、実際に損が出るわけではなく、「得べかりし利益」を取り逃すだけのことだ。

強引に唇を奪う場合はどうか?
せいぜい平手打ちを食らうことくらいを覚悟しておけばじゅうぶんである。しかも、たいして痛くない。マーケット・タイミングについては偉そうなことは言えないけれど、これまで何十発も平手打ちを食らってきた経験から、これについて僕はそう断言できる。但し、実践されて裏目に出ても責任は負いかねる。なにぶん、遠い日の記憶だ。想い出に変わった今となっては、痛みも忘れている可能性が高い。「痛かった!」と言われても、当方の関知するところではない。投資も恋愛も、すべて自己責任のもとで。時には慎重に、時には積極果敢に。

I have never regretted what I did.
I regret things I didn't do.
私は自分がしたことについて一度も後悔したことはありません。私は私がしなかったことを悔やむのです。
(イングリッド・バーグマン)


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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