政権交代から1ヵ月半が経過した。その間、安倍晋三首相は2012年の衆議院選挙のマニフェストで約束した「強い経済の再生」に向けて、2%の物価上昇を目標にした金融緩和、公共投資を中心とした補正予算を決定。

「経済再生へのロケットスタート」と安倍首相自らが言うように、次々と打ち出す経済対策は経済界や株式市場では好印象で受け入れられているようだ。

 だが、自民党のマニフェストには、実現すると国民生活を不安に陥れるものも数多く含まれている。そのひとつが保険外併用療養費制度に関するもので、マニフェストの「138 国民が安心できる持続可能な医療の実現」に書かれた次の記述だ。

 ≪患者の利益に適う最先端の医薬品、医療機器等が一日も早く使用できるように、現行の保険外併用療養費制度(評価療養)を積極的に活用し、保険収載されていない医薬品等をより使用され易くするとともに、審査手続きや体制の整備等を進め、海外で使用されている医薬品等が日本で使用できない状態の解消、さらには日本人により適した医療機器等の開発と迅速な導入を図ります≫

 これを読む限り、なんとなくよいことを書いているようにも思えるが、果たして保険外併用療養費は本当に国民にとってメリットがある制度なのだろうか。

保険外併用療養費制度は
混合診療を部分的に認めたもの

 日本では、自分が使った医療費の一部(70歳未満は3割)を負担するだけで病院や診療所を受診できる。これは、患者が受けた診察、検査、手術、投薬などに健康保険が適用されているからだ。

 しかし、病院や診療所で行われる治療のすべてに健康保険が適用されているわけではない。健康保険の適用を受けるためには国の審査をクリアしなければならないので、新しい薬や治療法が開発されても、健康保険が使えるようになるまでには一定の時間がかかる。たとえば、がんの治療では切除術と並行して放射線照射や抗がん剤投与なども行われることもあり、中には健康保険が適用されていないものもある。