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岸博幸のクリエイティブ国富論

GM破綻はマスメディアにとって「他山の石」

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第42回】 2009年6月5日
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 米国のゼネラル・モーターズ(GM)が米連邦破産法11条の適用を申請しました。日本でも各メディアがこれを大きく報道し“GMの解体は自動車産業の構造変化の象徴でもある”と論評していましたが、それを読んで思わず笑ってしまいました。テレビ局も新聞社も、自らはGMと同様な構造変化に直面しても抜本的な構造改革を先送りしているのに、他業種については正論を吐いているからです。

メディア・コングロマリットの
解体は構造改革

 先週説明したように、米国の代表的なメディア・コングロマリットであるタイムワーナーは、今年に入ってCATVとAOLをグループから切り出し、コンテンツ企業へと変身しました。メディア・コングロマリットの終焉の始まりとも捉えるべき大変革ですが、これは、マスメディアを取り巻く構造変化への対応、即ち構造改革に他なりません。

 インターネットの普及により、それまでマスメディアのコアコンピタンスであった流通経路の独占が崩れました。テレビ局にとっては電波の割当が、また新聞社にとっては大量の印刷・配送という巨大資本の必要性が、それぞれ流通部門で参入障壁を形成して独占のメリットをもたらしたのですが、インターネットがそれを破壊したのです。

 米国のすべてのメディア・コングロマリットは、流通部門におけるそうした変化に対応すべく、過去数年に渡って新たな流通経路であるインターネット上でのコンテンツ配信に腐心してきました。しかし、様々な試行錯誤の結果、ネット企業が構築したプラットフォーム上でコンテンツを提供してもほとんど儲からないなど、インターネットの活用について多くの貴重な経験を得ました。

 タイムワーナーの今回の動きやディズニーの「Hulu」への資本参加/番組提供などは、そうした試行錯誤の経験を踏まえ、メディア・コングロマリットが構造変化に対応して生き残って行くために大胆な構造改革を断行したものと理解できます。ある意味で、GMの二の舞にはならないという強い意思の現れなのかもしれません。米国の一部の新聞社が紙の発行を止めたことなども、その正否はともかく、同じコンテクストで捉えられます。

構造改革が遅々として進まない
日本のマスメディア

 こうした米国のメディア・コングロマリットのダイナミックな動きと比べて、日本のマスメディアはどうでしょうか。多くのところで社内的には様々な検討をしているようであり、その成果として多少の取り組みを始めているところもあります。しかし残念ながら、抜本的な構造改革に取り組んでいるところはほとんどないように見受けられます。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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