バンコク発ビジネス・生活情報誌『DACO』編集部のタイ人経理部長、ブン(女性)が日タイの架け橋となるべく日本人からの質問に答える大好評連載。今回は特別バージョンです。

明日にでも地上1階のダコ編集部内も浸水する、という状況が数日続いた一昨年の暮れ。バンコク中心部まで迫った洪水被害はまだ記憶に新しい。少し強い雨が降るとすぐ床上浸水になる土地もあり、洪水は風物詩と化しているところもある。今回は趣向を変えて、ブンにタイの洪水のことを聞いてみました。(編集部N)


【ブンからの回答】

洪水の受け止め方三様

 一昨年は、ノンタブリー県にある私の自宅も浸水したため、会社の近くのアパートに移っていました。

 さて、ものごとはどんなことでもそこから学ぶことができるというのが仏様の教えです。しかし何を学べるかは人によって違います。

 タイ人の洪水の受け止め方を大きく3つに分けてみましょう。

(1)悲観的で、洪水が悪いことばかりで、自分に何のいいこともない。洪水から何も学べないし、学ぼうとしない人。

(2)洪水にいいも悪いもない。ただの自然現象だと思って、いずれ去っていくことだと思っている人。

(3)洪水が、悪いことだと決めつけるのはなく、洪水は自分にとっていい面もある。洪水が何かを学ばせてくれるものだと思っている人。

感謝と政府を鵜呑みにせず

 (3)についてもっと詳しく述べます。言うまでもなく洪水は大きな試練です。道路が冠水し、交通が絶たれ、家には食料も少なく電気もないことを経験すれば、普段の生活のありがたみに感謝することができます。つまり自分のこれからの生き方を見つめなおすことができるわけです。

 油断しないで、最悪の場合に備えておくことも学べます。他人の助けばかり待たないで、まずはできる限り自分の力で頑張るようになります。また、政府が「洪水の被害が及ばない」と言っても、政府の情報にも誤りがあるから100%信じてはいけないということを学べました。

 これからは自分の家や会社、工場を守るために最悪の事態に備えて対策をとることができます。

泥棒が大事か命が大事か

 ものごとの優先順位を学ぶこともできます。たとえば、自分の家が避難勧告が出されるほどの被害に遭った。感電や感染症など死と背中合わせな状況でさえ、家の中の物が盗まれるという恐れで、家から逃げられない人がいました。これは自分の命より財産を優先しているのではないでしょうか。

水門の前と後での喧嘩

 「これ以上の浸水はごめんだ、早く水門を開けて水を流し出してくれ」派と、「ここの水門を開けたら最後、バンコク中心部が洪水になる」派が、水門の前と後で、開けろ開けるなの喧嘩をしていました。

 そうじゃないんです。水門の先の水路は、いままでずっと放っておかれたため、汚水にゴミや植物が浮き、水門を大きく開ければ水は入ってゆきますが、海まで流れ出て行かず、運河から水があふれ、結局、水門の前も後も洪水が広がっていくだけなのです。

 今になって水路を掃除していますが、この告知が徹底されなかったため、疑心暗鬼になり感情論が先行し、一時、殺伐としました。

 でもタイ人は、困った人を助ける習慣が身についています。これからいたるところでたくさんの慈愛が発露されてゆくことでしょう。

2011年11月。湖のようになったバンコクの北、ドンムアン「元」国際空港周辺。洪水にもめげないタイ人の明るさが、外国人には不思議でもあり、元気づけられた【撮影/『DACO】編集部】

(文・撮影/『DACO』編集部)

 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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