このところ日本のスポーツ界は競技以外の問題で揺れている。

 昨年末からは指導者の体罰が表面化し、その是非をめぐって議論が続いていたが、先週巻き起こったのが、レスリングの五輪競技からの除外問題である。

 12日に開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で2020年大会に実施する26競技中、25競技を選定。そこからレスリングが外された。残る1枠を野球・ソフトボール、空手、スポーツクライミングなど7候補と争うことになったのだ。

「日本を狙い撃ち」報道には疑問
男子はヨーロッパ諸国も強い

 この報道を受け、ワイドショーなどでは「レスリングは日本が強いから、また日本に対する嫌がらせだ」という論調があったが、それはないだろう。たしかに女子は強い。女子フリースタイルは04年アテネ大会から採用され、3大会で55キロ級の吉田沙保里、63キロ級の伊調馨が3連覇するなど金7、銀2、銅2の計11個ものメダルを獲得している。だが、新しい種目でもあり、それほど影響力はない。

 一方、男子は日本もそこそこ強いが、それ以上に強い国はある。ロシア、アメリカ、キューバ、イランにハンガリー、ポーランド、ブルガリアなどのいわゆる東欧諸国。また、「IOCの理事が多いヨーロッパが弱いからだ」というコメントもあったが、イタリア、フランス、ドイツ、スウェーデンなどの選手も結構メダルを獲っているから、それもない。

 五輪の実施競技はIOCのプログラム委員会が競技の実施状況をチェック。世界的普及度やテレビ放送の注目度、スポンサー収入など39項目を分析し、報告書にして上にあげる。それを元に理事会が選定をするのだが、レスリング関係者は「外れるわけがない」と思っていたふしがある。

 まず伝統。近代オリンピックは19世紀末、フランスのクーベルタン男爵が古代オリンピックを手本にした競技会の開催を提唱し、1896年にギリシャのアテネで第1回大会が行われた。古代オリンピックでは陸上競技などとともにレスリングが行われた記録があり、第1回大会でも採用された。この大会の実施競技は陸上競技、競泳、体操、レスリング、フェンシング、射撃、自転車、テニスの8競技。