彼らはハイレベルなトークしか期待しない

 また、Dさんは翌日、日本法人の役員会に臨みました。ふだんでもピリピリした役員会が、さらに凍りついたような雰囲気に包まれます。なぜなら、Dさんがどのような話をしにきたのか、日本法人の役員も敏感に感じとっていたからです。

 それをひと言でいうと、「ハイレベルなトークしかしない」ということです。Dさんはどんな質問も、事前に自分の頭のなかで練り上げた言葉で聞いてきます。それに対しては、練り上げた回答をする必要がある。質問を投げかけられた日本法人の役員は、いきなりアンカーバトンを渡されたような面持ちです。意図がどこにあるのかわからなくとも、何か答えないといけない。とにかくバトンを渡されたら全力で疾走なければならない……。マーケティング、サポートと各役員は順番に現状と課題についてプレゼンテーションしていくのですが、次にDさんはどんな「ショートクエスチョン」を発するか、こちら側は固唾をのんで待っているという状態でした。

 多くの海外トップ層が同様ですが、彼らは公私ともにオープンにしても公私混同はしません。グローバルなオペレーションをするために海外を回っているトップ層は、一人の相手とコミュニケーションをとれるのは、ほんの数分、数十秒ということもよくあり、公私混同している時間などないのです。
 ですから、当然ながら、トップ層自身はどんな相手でも事前の下調べをしっかりとします(させます)し、聞くべきことを整理してきます。それ対して、こちら側がはぐらかしたり、思いつきの発言をすれば、コミュニケーションはそれで終了。ハイレベルなトークしか求めず、何が効率的なのかを見分けるスキルに長けているのです。

 たとえば、Episode1と同じように「夢」の話になったケースで、海外トップ層が「日本人が日本人のために何ができるか、何をしたいか」ということを聞いてきたことがありました。海外トップ層ほど個人の夢と会社のビジョンを一致させた話をよく行うのです。
 そのときのメンバーは、各自いろいろなアイデアを出していたのですが、そのなかの一人が自分の顧客の話をしたのです。「私の顧客に化粧品メーカーがあり、海外のシェアを伸ばしてグローバル展開したいといっている。私はその支援がしたい」という意見でした。
 そのとき、その海外トップ層はその意見がメンバー個人の意向ではなく、他人の意向が入っていることに着目し、「その支援のグループに加わろう」と矢継ぎ早に語り、連絡をとり、ビジネスをすぐに実らせました。

 海外トップ層の嗅覚のすごさを感じたのはそのときです。彼らは自分が発した質問に対する回答を決してひと言ももらさず自分の頭に入れ、咀嚼し、すぐに行動に移すのです。