今月、三井化学と住友化学がエチレン設備再編に決断を下した。三井は合弁生産から退いて自社生産に専念する。その真意を聞いた。

三井化学社長 田中稔一<br />今回の再編はベストではない<br />もう一段の決断が必要Photo by Toshiaki Usami

──今回の再編は納得いくものか。

 石油化学の核であるエチレンは、国内の供給過剰をどのように解消するかが業界共通の課題だ。以前から、千葉にある4社・5プラントを、公平な話し合いに基づいて再編するために“千葉大連合”を組もうと呼びかけてきた。出光興産とは2010年に設備の共同運営を始めたものの、住友化学、丸善石油化学にはこの案が最後まで受け入れられなかった。

 そこで当社は今回、15年に京葉エチレン(三井化学、住友化学、丸善石油化学が共同出資するエチレン生産会社)から資本を引き揚げ、調達もやめる決断をした。

 中東や中国でコスト競争力の高いエチレン設備が増加し、数年後には米国でシェールガス由来のエチレンが台頭することもあって、日本勢は追い詰められている。

 年間約770万トンある現行の国内生産能力を、皆で協力して需要に見合う500万トン程度に再構築することが必要だ。

──次に提案した京葉エチレンの設備を停止する案も、住友と丸善石油の同意を得られなかった。

 両社とも顧客との関係があり、自社設備を止めるのは難しいという。ならば規模も大きい合弁の京葉エチレンを止めるのが妥当だと考えた。しかしこれもかなわず、今回のような再編に落ち着いた。

 当社自身に限れば、京葉エチレンから調達を停止する上、千葉の自社設備が70%の稼働率でも利益が出るよう設備改良するので、千葉と大阪にある国内2設備の生産効率がぐんと上がり、収益改善が期待できる。