先週メディアをにぎわしたキリンとサントリーの経営統合に関して、その背景や経営統合後の筆頭株主がサントリー創業者一族になるという話は、先日ザイオンラインのコラムで書いたが、今回は、サントリーが普通に株式公開をして上場企業になる場合と比べてのメリットについてまとめてみたい。

オーナー企業の上場に伴う
株式オーバーハングを回避

 オーナー企業の上場、あるいは、子会社上場に付きまとう問題に株式オーバーハングの問題がある。これは、上場後も大きな持ち分を保有するオーナー、あるいは親会社が、いずれ株式を売り出すであろうとの憶測が株価の上値を抑えるという問題である。オーナーや親会社が株式を売り出せば需給バランスが崩れて、売り圧力が強まるというものである。サントリーは9割を創業家が保有する状況ゆえ、このまま普通に上場してもその持分を下げていくには相当な期間を要する。しかし、もしキリンとの経営統合が実現すれば、オーバーハングを回避しながら、持ち分を3割~4割にまで落とすことが可能である。

 また、もしサントリーが単独上場企業となった後、いざ創業家が持ち分の売却を行う場合は、後述する後継者問題も絡めて、内外で不必要に様々な憶測やノイズを巻き起こすこととなり、経営の邪魔をしかねない。

後継者問題の解決

 オーナー企業の場合、その後継者をどうするかという問題が常に付きまとう。オーナーの存在が企業価値の一部に組み込まれてしまっているケースも多く、オーナーが第一線から退くと株価が下がるケースもある。サントリーほどの大企業の場合は、企業価値に占めるオーナーや創業家社長の価値の割合はさほど高くはないかもしれないが、トヨタ自動車で久しぶりに豊田家出身の社長が登場すると大きくメディアでも取り上げられたように、大企業においても、創業家の存在感、影響力はいまだ大きいのが実際である。サントリーのように、未上場企業の場合はなおさらである。

 サントリーが株式公開を行って上場企業となったとしても、この後継者問題を即座に解決することはできないが、キリンと経営統合をすれば、上場を果たすと同時に後継者問題まで解決してしまうことができる。トヨタの例で見られたように、たとえキリンと経営統合をした後でも、サントリー創業家の人材がどのポストに就くかに関しては引き続き高い関心を集めることとなるだろうが、サントリー単独の場合に比べると相当和らぐことは間違いない。