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安東泰志の真・金融立国論

株高続く中で国内機関投資家は売り越し
リスク回避思考に陥るサラリーマン経営者の大罪

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第30回】 2013年2月21日
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株高下でも進む
国債への集中投資

 いわゆるアベノミクス効果とされる円安・株高効果で、日本企業にもやや明るさが戻りつつあるように見受けられる。

 しかしながら、この株式相場の中で株式の売買主体を見ると、少し違った風景が見えてくる。昨年12月から本年1月の東証1部の投資部門別株式売買状況(金額ベース)を見ると、総額では273億円の買い越しとなっているが、その内訳は、外国人が約2兆7000億円の買い越しなのに対し、国内法人は約2兆円の売り越し、国内個人が約7000億円の売り越しになっている。

 この国内法人の売り越しの中身は、金融機関が1兆9000億円の売り越しであり、その中で都銀・地銀が売り越したのは800億円程度なので、残りは、生損保や年金等の売りである。つまるところ、このところの株高を演出しているのは外国人投資家である反面、本来、長期投資によって日本企業を育てていくべき国内の生損保や年金は、売りに転じているのである。筆者は、銀行と企業の株の持ち合いには従来から批判的なので、都銀・地銀の売り越しは是とする。

 一方、含み損を抱えていた生損保や年金は、やれやれといった感じで売りを増やしているのだろうが、これには強い違和感を覚える。国内投資家は、株式を筆頭とする「リスク資産」を減らし、国債にシフトする、いわゆる「リスク・オフ(リスク回避)」傾向をずっと続けているが、それでは、1500兆円の家計部門の金融資産は、ROE(株主資本利益率)目標のない国(政府)に還流し、非効率に使われるだけで、企業の活性化には繋がらない。

 家計部門のネットの金融資産が、ほぼすべて国や地方の借金に充当されており、企業の成長に全く使われていないことは、2年以上も前の連載第1回で既に指摘したことであるが、その状況は、変わらないどころか、どんどん悪化しているということである。無論、これを裏から読めば、だからこそ、大量の国債の消化が円滑に進んでいるのであるが、本当にそれでいいのだろうか。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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