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訳者が語る『まぐれ』―ウォール街を震撼させた問題作待望の邦訳!

【第18回】 2008年4月4日
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著者ナシーム・ニコラス・タレブについて

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ナシーム・ニコラス・タレブ著/望月 衛訳 ダイヤモンド社刊 2000円(税別)

 ナシーム・ニコラス・タレブは長年オプション市場でトレーダーをしてきた人間だ。キャリアの初期には為替市場を相手にし、その後、金融機関の自己ポジション・トレーダーをしたり「場立ち」を自営でやったりした後、自分のヘッジファンドを立ち上げている。1996年には『ダイナミック・ヘッジング』というタイトルで、トレーダーの立場から書いたデリバティブの価格評価やリスクヘッジに関する本を出している。

 2007年の金融市場はサブプライム・ローンのデフォルト率の上昇に始まる信用収縮が一番大きな材料だったと思う。タレブは早い時期に、住宅ローンなどのキャッシュフローを証券化したCDOやSIVのリスクは市場の投資家が思っているよりも大きいと警告していた。また、1998年のLTCM危機についても、前年に「彼らは市場に極端な変動が起こりやすいことを考慮できていない」と発言している。そのためか、タレブを「いつも危ない危ないと言っているやつ」とみなす向きもあるようだ。しかしそれは正しくない。本書でも述べられているが、「極端な変動」は極端に儲かることも極端に損をすることも含まれ、タレブはその両方を相手にしている。株式出身の人などと違い、為替出身の人は上がることにも下がることにもさして思い入れはないことが多いようだ。

本書『まぐれ』について

 原書のFooled by Randomnessは、かれこれ5年以上も前に出た本だ。アメリカでは数十万部のベストセラーとなった。それが今日まで翻訳されず、僕が翻訳できることになったのは次のような事情による。

 タレブのウェブサイトには以前、この本がどの言語に翻訳されている(またはされる予定である)かが書かれていた。それによれば、「日本語版の翻訳者はあの『フィネガンズ・ウェイク』を訳した人だ」とのことであった。つまり偉大なる柳瀬尚紀さんが翻訳する予定だったのだ。僕がこの本に気づいたのは出版後しばらく経ってからで、これは面白い、やらずにおくものかと思ったのだが、もはや版権は取られていた。

 その後、待てども待てども日本語版は出ず、タレブにメールを送ってどうなっておるんだと聞いてみたり、ときどき(ダイヤモンド社をはじめとする)出版社にチェックしてもらったりしていた。2007年の年初にダイヤモンド社がタレブの次の本である、『ブラック・スワン(黒い白鳥)』の版権を取ったとき、一緒に本書の版権も押さえてくれて、ともに僕に仕事をくださった。ありがたいことである。

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