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『白い恋人』と『面白い恋人』の和解
ユーモアを解する気持ちと社運のせめぎあい

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第22回】 2013年2月22日
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 人気お笑い芸人を数多く抱えることで知られる芸能事務所・吉本興業が、『面白い恋人』という洋菓子を発売したのは二〇一一年だった。商品を企画開発したのは、関連会社のよしもとクリテイティブ・エージェンシーである。

 これに対し、自社製品とあまりにも類似しているとの理由で『面白い恋人』の販売に待ったをかけたのが、札幌市に本社を置く石屋製菓だった。こちらが主力商品として販売していたのが、『白い恋人』という洋菓子だったからだ。

 白い恋人と面白い恋人――、一方は北海道の雪をイメージした商品で、他方は、いかにもお笑い芸能事務所の企画らしく、パロディを加えたと思われる商品だ。上方はお笑いの地でもあることから、この商品名が考えられただろうことも想像できる。

 『白い恋人』は多くの人に知られ、札幌発でありながら全国区にもなったお菓子だ。

 北海道土産の定番とも言える人気商品だが、このお菓子を全国区にしたのは、二〇〇七年の“賞味期限の改ざん”事件だったように思う。同じ北海道の雪印グループや伊勢神宮前の老舗和菓子店赤福、ミートホープ社、船場吉兆等々、この時期は食品偽装や賞味期限の改ざん、ずさんな衛生管理等々が問題になっていた。

 『白い恋人』はそうした不祥事と社会の批判を乗り越え、人気を取り戻したお菓子でもある。

 今季はJ2に降格したが、石屋製菓は、コンサドーレ札幌の公式スポンサーも務めている。吉本興業が『面白い恋人』を発売したのは、ようやく不祥事も忘れられ、売り上げも回復した時期だったのだろう。

 商標権を侵害されたとして、石屋製菓は『面白い恋人』の販売差し止めと、一億二〇〇〇万円の損害賠償を求めて訴訟を起こした。それから約二年を経て、今月一三日、両者のあいだで和解が成立した。

 和解内容はと言うと、吉本興業は今後も商品名として『面白い恋人』を使えるが、本年四月以降に発売される商品については、パッケージのデザインを石屋製菓と合意したものに変える。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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