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岸博幸のクリエイティブ国富論

百年に一度の政治の酷さが日本経済の危機を増幅させる

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第20回】 2008年12月19日
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 先週、麻生総理が「生活防衛のための緊急対策」という経済対策を発表しましたが、びっくりしました。内容が余りにひどいからです。

 11月の工作機械受注は、前年同月比6割減という凄まじい減少を記録しました。内閣府の景気ウォッチャー調査は2ヵ月過去最低を記録しました。日銀短観での大企業・製造業の業況判断指数は第一次石油危機直後と並ぶ落ち込みでした。日本では欧米と異なり、間違った政策が原因で今年の初めから景気が悪かったのですが、金融危機を境に日本経済もいよいよ非常事態に突入したのです。

政治の無策と官僚主導の集大成

 このような場合は財政出動が必要不可欠であり、今のタイミングで経済対策を講じること自体は正しいと言えましょう。問題は対策の中身です。派遣切り対応の雇用対策、地方交付税の増額など、弱者救済のためのその場凌ぎのバラマキのみで、経済成長を引っ張る、成長産業を作り出すといった観点からの対策は皆無です。弱者救済というボトムアップはもちろん大切ですが、今のような非常時には、経済成長を牽引するところにも政府が関与することは不可欠です。それが皆無である今回の経済対策はいかにも貧弱に見えます。

 米国の経済対策と比較すると、それがよく分かるのではないでしょうか。米国政府は大規模な公共事業を行うようですが、この際に老朽化したインフラを近代化して米国の競争力を高めようとしています。その他にも再生可能エネルギーなどの成長産業への政府支出(研究開発)などを行うようであり、目の前の危機への対応という観点のみならず危機後も視野に入れた戦略的な財政出動を準備しています。英国も同様に、例えば学校や医療機関へのブロードバンドの整備など、クリエイティブ産業という戦略産業の強化や公共サービスの高度化などの戦略性を持った財政出動を行おうとしています。

 これらと比べると、残念ながら日本の経済対策には戦略性や目的意識が感じられません。メディアや政治家が大変だと騒ぐ派遣切り、中小企業の資金繰り、地方の困窮などにお金を出しますとしか感じられません。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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