『情報メディア白書』(電通総研編 小社刊)は1994年から毎年刊行しているデータブック。新聞・出版から広告、携帯電話、通信販売業まで情報メディア全般にかかる14の産業を統計データを元に精緻に分析し、メディア関係者やマーケターの戦略立案を支えてきた。2月に発売した2013年版から、内容の一部をダイジェストで紹介する。最終回の今回は地上波テレビ放送業界を展望する。

 2011年度の地上波テレビ市場規模は2兆7652億円(前年度比100.2%)と微増であった。ただし、テレビ広告費は2008年に発生したリーマンショックによる各企業の広告費削減以前の水準までは立ち直っていない。現在の市場規模は、2兆円台であった2000年代半ばの9割程度である。

 しかし、懸念された東日本大震災の影響は地上波民放テレビ局にとって大きなダメージとなるまでには至らなかった。スポット広告が、震災による消費意欲の減退などの影響を受けていたが、「流通・小売業」「化粧品・トイレタリー」など回復の早い業種を中心に、6月以降は徐々に前年並みを確保するようになり、年後半には「自動車・関連品」も復調に転じている。

 民間放送は2008年4月に「マスメディア集中排除原則」が緩和されたことで、「認定放送持株会社制度」が導入され、持株会社が複数の放送事業者を束ねる経営が可能になった。

 この制度の下でフジ・メディア・ホールディングス(2008年10月)、東京放送ホールディングス(2009年4月)、テレビ東京ホールディングス(2010年10月)といった認定持株会社が生まれたが、2012年10月1日には、新たに日本テレビが認定放送持株会社体制への移行を完了した。在京キー局ではテレビ朝日以外はすべて同制度に基づく持株会社制を採用したことになる。

 ネット対応も進んだ。2012年4月1日、在京キー局5局と電通が共同で、テレビ向けVODサービス「もっとTV(テレビ)」を開始した。本サービスは、対応するインターネット対応テレビやスマートフォン、タブレット等で視聴可能で、日テレオンデマンド、テレ朝動画、TBSオンデマンド、テレビ東京オンデマンド、フジテレビオンデマンドおよびNHKオンデマンド(2012年7月7日から)がサービスを提供している。