総合商社の「双日」、三菱商事グループの「東洋冷蔵」、さらに食肉最大手の「日本ハム」まで――。

  この1年、海のダイヤとも称されるクロマグロの養殖には、異業種の大手企業が続々と参入しており、大きな転換点を迎えている。

 「世界的な需要増や漁獲規制に加え、燃料高による漁船の休業。このままいけば天然クロマグロの安定調達ができなくなることは目に見えている」。

 双日幹部がそう指摘するように、天然モノから養殖への移行は必至の情勢だ。実際、国内のマグロ養殖量は今年4000~5000トン程度だが、来年は一気に倍増が見込まれている。

 こうした流れに、約30社あるとされる既存の中小零細業者は危機感を募らせている。「相次ぐ新規参入でマグロの稚魚であるヨコワの需給が逼迫してきた」と九州のある養殖業者。

 マグロ養殖は、ヨコワを海中のいけすで2~3年飼育し、体重30~70キログラムに成長させて出荷する。その際ヨコワは漁師から調達するが、数年前まで一尾1000円前後だった高知県産のヨコワは、今2000円前後。条件によっては2500円を超す場合もある。

 同じく天然稚魚に頼らざるをえないウナギ養殖では今夏、稚魚のシラスウナギが不漁となり、市場が大混乱したことは記憶に新しい。

 ヨコワも年によって漁獲量の差が激しい魚だ。水産会社幹部は「最近は豊漁が続いているが、もし来年不漁になったら、さらに値上がりして、資金力のない業者の経営はすぐに行き詰まる」と頭を抱える。エサ代の高騰も悩みの種だ。

 一定の設備を整えるには数億円規模の初期投資が必要なマグロ養殖は、大企業向きのビジネスともいわれる。稚魚の争奪戦は熾烈になっており、中小零細業者の淘汰は避けらない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 山口圭介)