コンセプトを抽出する
企画段階での取り組み

「会社組織における総務は、経営理念を実現するために重要な位置づけになります。ところが、雑多な業務に日々追われているのが現実ではないでしょうか。オフィスの移転、環境改善にしても、その分野のスキル、経験のある人が担当するのは稀です。あまり経験しない非日常業務を、総務がきちんと運営するのは難しい。これは隠れた経営課題で、アウトソーシングや専門家の常駐によって、総務の社員たちが本来業務に集中できるようにサポートします。それが組織強化、経営課題の解決につながると我々は考えています」

 オフィス移転というイベントにフォーカスした場合も、「潜在ニーズをどう引き出すか」がポイントだと小川氏はいう。一つの手法として挙げるのが、ポストイットを使ったブレイクダウン。クライアントの社員から、オフィスに対する不満、新しいオフィスに期待することなどをキーワードとして、思い付く限り書き出してもらい、それを整理し、優先するキーワードを抽出していく。これをデザインやゾーニングに活かしていく。

「経営・事業部門・管理部門それぞれ利害や目的が衝突しがちな課題を吐き出し、『不満の解消』を超えた『より良くするため』といった肯定的な『目標&コンセプトの設定』が早期に合意できれば、移転の8割が達成できたことになります。逆にいうと、コスト削減や形にすることにとらわれ、疎かになることが多いのかもしれません」

新しいオフィスに必要な
住空間のデザイン要素

 潜在ニーズを形にする際、同社らしさが光るのはデザイン。住宅事業の経験を基に、オフィス空間に、住空間のテイストをプラスした提案も行っている。現在、多くの企業がオフィス移転で求めるのは、コミュニケーション強化と居心地の良さ。そこで画一的なオフィスデザインではなく、住空間のデザイン要素を取り入れ、リビング系家具メーカーの家具も置く。

 エントランスに書斎的な雰囲気を持たせたり、コミュニケーションスペースに木材を使い、リビングルームのようにしつらえたり。クライアントの目的に沿った形の提案を行う。

「自宅にいるより、オフィスで過ごす時間のほうが長い人もいます。今まで、住宅のデザイン要素が取り入れられなかったほうが不思議。オフィス移転にはコストのメリハリが必要だと言われますが、これからは表現のメリハリも求められていくはずです。住宅事業の経験を生かして、新しいオフィスの形を提案していきたいですね」

 これまで、オフィスと住宅のデザインは別物だったが、人が過ごす空間であることは同じ。同社の提案は、オフィスの新しい方向性を示すとも言える。