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日銀総裁-金融政策の重要度が増す中、後任人事は政争の具に

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第18回】 2008年2月19日
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 金融市場の専門家の間では、来月任期を迎える福井総裁の後任の行方が注目を集めている。日銀総裁は、いわずと知れた、わが国の金融政策を担う日本銀行の総元締めだ。昨年8月のサブプライム問題発生以降、世界的に金融市場が不安定な展開を示したこともあり、最近、日銀総裁に対する役割期待は大きくなっている。

 その日銀総裁は、衆参両院の承認を得て、内閣総理大臣が任命することになっているが、現在、衆参両院では“ねじれ現象”が発生しており、日銀総裁の選出についても、政党間の政治的駆け引きが予想される。総裁選出に混乱が生じるようだと、わが国の金融政策の円滑な運営にも支障が出る可能性もあるだろう。


日銀の政策は
日本経済の舵取りを担う

 金融政策とは、基本的に、政策金利=無担保コール翌日物金利の変更や、市中に流れる流動性=お金の量を調節することによって貨幣価値の安定化を図ったり、円滑な経済活動の維持を目指すものだ。特に現在のように、株式などの金融市場の機能が高度化すると、市中に流れる流動性を適正に管理することは極めて重要な役割期待といえる。

 過剰な流動性を供給してしまうと、その一部の資金が株式や不動産の市場に流れ込み、短期間に株価や地価を大きく押し上げることが想定される。それは、大規模なバブルの発生につながることも考えられる。

 1980年代後半、円高不況になることを警戒して、日銀が多額に供給した資金の一部が、株式や不動産の価格を大きく上昇させ、結果的に“資産バブル”につながった。そして、“資産バブル”の崩壊の後、10年以上にもわたって、わが国の経済は長期低迷を経験したことは記憶に新しいところだ。

 80年代中盤以降の日銀の金融政策の運営方法が“資産バブル”の下地を作り、90年代初頭の性急な金融引き締め政策が、バブル崩壊後の長期低迷の遠因になったとの声もある。金融専門家の中には、「当時の日銀がもう少し適切に政策運営をしていたら、“資産バブル”とそれに続く低迷が、あれほどの規模になることはなかった」と指摘する人もいる。逆に言えば、それほど、金融政策が重要であり、運営を失敗すると、経済全体に大きなマイナスの効果が及ぶことになるのである。

グローバル化で
複雑化する金融政策

 経済がグローバル化することによって、一国の金融政策の効果は当該国に限らず、海外諸国にも大きな影響を及ぼすことになる。例えば、わが国で緩和気味の金融政策を取り、潤沢な流動性を供給した場合、供給された資金の一部は海外の金融市場に滲み出すことが考えられる。わが国が超低金利政策を維持し、欧米諸国の金利水準が上昇傾向を辿ると、相対的に高い金利を求めて、わが国の投資家が、資金を欧米の株式や債券などの市場に投資を行うことが考えられる。それは、わが国の流動性が為替市場で外貨に変わり、結果的に欧米の金融市場に流入することになるのである。

 経済がグローバル化して、国ごとの垣根が低くなると、お金は自由に、しかも迅速に、より有利な投資機会を求めて、海外諸国の金融市場を移動することになる。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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