スワヒリ語で“どこでもない”
という名の町へ

 ナイロビにある国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の所長が言うには、僕はとても運が良かったらしい。
 国会終了の翌日、UNHCRの救援物資を積んだ輸送機が、ケニア北西部にあるカクマ難民キャンプへ向かう予定だという。
 ウガンダとスーダン南東部との国境付近だ。同じ輸送機で同日に戻ってこられる。
 キャンプを見学し、難民救助員や難民たちと話をする時間は十分にあるだろう。

 輸送機のパイロットは、英国空軍の機長だった。彼は僕をコックピットの隣の席に座らせ、北へ向かって飛びながら、東の方角にそびえ立つ標高1万7千フィートのケニア山や、乾いた砂漠と肥沃な農耕地がつぎはぎ模様のように見えるグレート・リフト・バレーを指し示した。

 トゥルカナ湖が視界にはいると、100フィートほど急降下して、ピンク色のフラミンゴが浅瀬で歩いているのを見せてくれた。
 プロペラの音に驚いたフラミンゴが次から次へと波のように飛び立ったために、飛行機がバランスを失い、パイロットはコントロールを取り戻すのに苦労した。
 もう少しで墜落するところだった、とあとからパイロットに打ち明けられた。

 カクマの町にある小さな飛行場に降り立った。
 カクマとはスワヒリ語で“どこでもない”という意味である。一日の平均気温は摂氏四十度で、しばしば激しい砂埃に襲われる。
 キャンプへはジープで向かった。運転手が最近の砂嵐で道路が封鎖された場所を示し、そのときは、キャンプへ救援物資を運ぶことができなかったと言った。

 「クモ、サソリ、ヘビに気をつけて。毒を持ってますから」彼は言った。