お金がどうやってできるか示すピラミッド

「お金はメディアのひとつでしかない」<br />と知れば、呪縛と偏見から解き放たれる

 「お金のピラミッド」図を見て欲しい。本図は、お金ができる仕組みを表わすフレームワークだ。覚える必要はないが、なんとなく雰囲気をつかんでもらえると、のちのち理解が進むと思う。

 お金ができる一番シンプルな方法が、お金でお金を殖やす”マネーゲーム”だろう。1990年代後半〜2000年代前半に、“ハゲタカ”と呼ばれたヘッジファンドが手持ち以上のお金を投機的にさらに殖やしていったのが、例のひとつだ。このお金でお金が殖えた時代を知っておくと、比較対象として、その後の「お金」の変化を理解しやすくなる。

 次に、「お金を稼ぐ(バリュー to マネー)」方法がある。自分の持つ価値や強みによって他人や事業などに貢献し、その対価としてお金を得る世界である。“マネタイズ”と言い換えられ、図中のaで示している。起業は、そのひとつの事例だ。

 そして、「お金を創る(クレジット to マネー)」方法もある。“信用創造”あるいは、”キャピタライズ“といわれ、図中のbで示している。一例では、日本銀行やFRB(米連邦準備制度理事会)などの中央銀行が行っている「お金を刷る」行為がそれだ。彼らは、国家の信用に基づいてお金を発行している。最近では企業が発行するポイントなど、お金に限りなく近いものを国家以外が発行し、大規模に成長中だ。21世紀は、この信用創造(キャピタライズ)を、企業のみならず個人がもっと行うようになるだろう。ピカソが好んで小切手を使ったというエピソードも、彼がキャピタライズの何たるかをよくわかっていたことを物語っている。

 続いて、「お金を使わないで価値を交換しあう(バリュー to バリュー)」方法がある。信用の土台がある関係では、お金を介さない“物々交換”が成り立つ。“非貨幣経済”と呼ばれ、図中のcがそれだ。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で不要品を直接やりとりする例などがある。ピカソがワイン現物による報酬で、ロートシルトのラベルに絵を描いたのも、この価値の直接交換に当たる。

 最後に、これからの新しい世界に対応するための基本的な知恵、つまり「新しい価値観のコミュニティを創る」ために信用のきずなを広げていくことを知る必要がある。その手法や意味についても、この連載でも触れていきたい。

(次回は3月18日更新予定です。)


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