KDDI、沖縄セルラーは、auケータイをかざすだけで、その方向の空間情報が表示される「実空間透視ケータイ」のβ版を6月25日から提供開始した。2008年度に「TECH-PERT PANEL CEATEC JAPAN 2008 ソフトウェア部門賞」を受賞するなど、注目を集めていたサービスのお目見えである。

 具体的にどんな機能なのかというと、この機能を搭載した携帯電話をかざすと、その方向の空間が仮想的に把握され、画面に現れる。有り体に言うと、建物などがあって目視できない空間も画面上に表示される、すなわち、“透視”できるというわけだ。

実空間透視ケータイ
サイトでは、β版アプリのダウンロードサービス、ムービーによるデモ体験の提供なども行われている。

 開発元によると、研究の由来は、「孫悟空がお釈迦様の掌の上で動き回っているイメージ」。すなわち、携帯電話をお釈迦様の掌のような存在にして、自分の周辺の世界の縮図を直感的に把握できるようにしたい、ということらしい。「自分の周辺の世界」を把握するということは、まず、空間の中で自分がどこにいるかを把握しなければならない。まず、それを実現したというのが、この新機能の最大のウリだろう。

 紙にしろ、画面にしろ、地図で目的地を探すときのことを想像してほしい。まずやらなくてはならないことは、自分がその地図上のどこにいて、どちらを向いているかを把握すること。

 地図をクルクル回して……というような経験がある方もけっして少なくないはず。ところが、この「実空間透視ケータイ」では、GPSで位置が測位され、知りたい方向に携帯をかざすだけで、その「向き」も判定される。さらには、移動中の状態も自動的に把握。歩いているとき、自転車に乗っているとき、車や電車に乗っているときなど、7種類の移動状態を自動推定する機能も搭載しており、携帯が使っている者に勝手に「合わせてくれる」というわけだ。

 当然ながら、こうした状態を実現するためには、最新のセンサー技術が使われている。GPS、加速度センサー、マイクを通じての音センサーなどを複合的に活用することで、お釈迦様=携帯電話が、孫悟空=ユーザーの位置を把握するのである。SF映画などで、登場人物が高性能のセンサーらしき箱をかざしながら未知の場所を探索しているシーンがあるが、21世紀ニッポンでは携帯電話がその役割を果たすようになったとも言える。

 現在、開発元では、この新機能を楽しむサービスの第一弾として、「地球アルバム」というサービスを開始。β版をサイト上で公開している。携帯で写真を撮る際、かざした方向が自動的に判定され、その位置の部分に「足跡」のように写真を保存できるというものだ。将来的には保存した写真を公開できるようになる。

 また、開発元のサイトでは、スケジューラーなどと連動した「寄り道ガイド」、ある特定の地域ならではの情報を共有する「エリア別百科辞典」など、新機能を楽しむためのアプリをいくつか紹介、公開投票を行っている。ベース技術を整えて、使い道は、ユーザー主導、というのが、イマドキの開発ということだろう。

(梅村 千恵)