途上国の人たちだって負けてない!
自分たちで助け合うしくみ

「1999年にはわずか1カ所だった図書館を、2010年に1万カ所まで増やせたのは、いったいどうしてですか?」

 ウッド氏のもとには、そんな質問がよく寄せられるという。ネパールから始まったルーム・トゥ・リードの活動は、現在ではバングラデシュ、カンボジア、インド、ラオス、南アフリカ、スリランカ、タンザニア、ベトナム、ザンビアへと広がっている。世界各地のボランティアたちの強力なサポートがあるとはいえ、10年間で1万カ所以上もの図書館を開設するのは並大抵のことではない。

 ウッド氏は、その秘訣を次のように明かす。

 僕たちの成功を支える重要なカギは、地域社会を巻き込むことです。ルーム・トゥ・リードの役割はプロジェクトを管理することではなく、地元の人々をその気にさせることなのです。

 ルーム・トゥ・リードには、「チャレンジ・グラント」モデルと呼ばれるしくみがある。これは、学校や図書館を建設するための必要経費の何割かを、労働力や資金というかたちで支援する途上国の地域社会にも負担してもらうしくみだ。

 チャレンジ・グラントでは、まずルーム・トゥ・リードの現地スタッフが調査をして、地域社会の協力体制とやる気を見極めてから、具体的な支援を始める。プログラムは地域の状況に合わせて修正し、文化的にも受け入れやすくする。また、郡や国の教育当局とも緊密に連携する。役所が教師を確保すると保証しなければ、その村には学校を建設しない。

 チャレンジ・グラントの根底にあるのは、「依存」ではなく「自立」を促すという考え方だ。

 困っている地域社会に「施し」をすれば、それでいっとき目先の問題は解決するかもしれない。しかしそれでは、終わりなき依存の連鎖を生みかねない。

 だからルーム・トゥ・リードは、地元住民に敬意を払い、彼らに協力を仰ぐことで自立を促すのだ。彼らはプロジェクトの最初の段階で、地域住民にこう声をかける。「図書館や学校を必要としているのは誰よりもあなたがたです。あなたがたがやろうと思わなければ、私たちは手助けできません」。

 ルーム・トゥ・リードのやり方はまさに、途上国と先進国の個人がつくるチームワークのプロジェクトといえる。