ところで、私が「LEDと有機ELが究極の光源で、これを超える光源はない」と考えている理由は、内部量子効率が100%を達成しているからだ。有機ELが光るのは、「電子を光子に変換する」わけだが、その変換割合(内部量子効)は、有機ELの場合、ほぼ100%である。
 となると、光源に限って言えば人類はエベレストの頂上にたどり着いたようなもので、これ以上高くは登れない。光源としては、LEDや有機ELを超えるものを探すのはむずかしい。

有機ELとLEDはどう棲み分ける?

 テレビというのが、リビングでの据え置き型から壁一面にセットされていくのと同じように、照明器具も、有機ELの登場で大きく変わる。いまの典型的な日本の家には、部屋の天井から蛍光灯が一つぶらさがっているだけの状態だが、有機ELのような新しい照明が出てくると、日本の家の風景も大きく変わっていくだろう。蛍光灯はこれまで、部屋全体を目いっぱい明るくしてきたが、本来は、必要なところに必要な光があればいい。高級ホテルや高級レストランなどで使われている多灯分散型と呼ばれている照明方式である。有機EL照明は、それに向いた照明である。

 照明に関しては、電機メーカーだけでなく、家具メーカーや建材メーカーも興味をもっていて、建材の一部に有機ELを取り入れて、新しい応用が切り開かれようとしている。彼らにとっては、有機ELが面光源のため、均一に発光し、目に優しく、シーンに応じた特殊照明を実現しやすいこと(シースルー照明も可能)などから、壁の一部を光らせたいなどの要望もあるという。

 また家具を光らせるとか、照明器具だと感じさせない照明もある。たとえば、木枠で障子のような有機EL照明パネルをペタッと壁に貼っておいて、それが全体として光るようにすると、あたかも外の光が取り込まれているような、昔の和室感覚の照明がすぐにできる。つまり、いままで誰も体験したことのない、まったく新しい空間を手に入れられるようになる可能性がある。

 テレビの形態が変わって、使い方も変わってくるように、照明に対する考え方や使い方も、これから大きく変化するのではないかと期待している。

 これから10年──有機ELによるテレビ、照明、さらには有機太陽電池、有機半導体をも含めた「有機エレクトロニクス」の世界が人々の生活を、社会を一変させていく。その技術をもつ国内企業こそ、新しい時代の担い手として力を発揮し、活躍できる土壌が無限に広がっているように見える。ガンバレ、ニッポン企業!城戸は応援しています!

<連載了>


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