やりたいことをどうやって実現するかは、
走りながら考えればいい!

米田:今の時代を楽しく生き抜くためのサバイバル術として、「なりたい自分」のキャラクターを先に作ってしまう、ということも、はあちゅうさんが昨年出された著書『自分の強みをつくる』に書かれていますね。自分から見た「自分」と他人が見ている「自分」は違うから、セルフイメージを先に作り、それを演じてみることも大切だ、と。

伊藤:ブログが有名になって発売した本が売れたとき、私なりに気づいたことがあったんです。それまでの私は、特別な才能も自信もなくて、ネガティブ思考の塊だった。2歳のときから「いつか本を出したい」と思っていた割に、心のどこかで「きっと実現できないまま人生が終わるんだろうな」と諦めているような悲観的な子で(笑)。

米田:それは意外だなあ(笑)。

伊藤:でも、自分でも想像していなかったほど若くして本を出すことができ、そのとき「夢って叶うんだ」と知って人生に対する見方とか価値観が180度変わったんです。でも本を出版して周囲の見る目は明らかに変わったけれど、私自身はそれ以前と同じまま。つまり見え方と内面は一緒じゃなくてもいい。逆にいうと、見られたいように振る舞い、その後でゆっくりと自分の内面がそのイメージに追いついていけばいいんじゃないかと考えるようになってきて。

10年後なんて誰にもわからない!<br />予測できない未来をどう生きるか?米田智彦さん

米田:自分をコンテンツ化していくときに1つのセルフイメージをつくっておくのは有効ですよね。僕も移動生活中は、ハットにトランクというビジュアルを保ったりしました。知らない人と会うときも向こうが気づいてくれるんです。でも、そうやって「セルフデザイン」することが今につながる大きなターニングポイントになったんですね。

伊藤:ええ、いろんなことを割り切れるようになったというか。それまでは理想に追いつくまでは発言したり、自分の意見を外に出したりしちゃいけないと思っていたんですけど、とりあえず走りながら考えたり、磨いていけばいいんだ、と視点が変わりました。

米田:はあちゅうさんはブログのほかにも、たくさんのプロジェクトに関わってきましたよね。学生時代にはレストランのプロデュースにもチャレンジして。

伊藤:あのときも、「やってみたい」とブログで書いたらお仕事がきちゃったんですよ。もちろん初めてのことだからどうすればいいかわからないんだけれど、でも受けたからには「やれるフリ」をしなくちゃいけない(笑)。とりあえず相手の企業の方と会ってみて「何をしてたらいいですか」と聞いてみる。それを繰り返していると、自分の役割とやるべき方向性もだんだん見えてくるんです。

米田:ああ、それは僕もまったく同じが経験があります。数年前にある某外食チェーン店からツイッターの運用をやってほしいと頼まれたことがあったんです。当時アカウント運用なんてルールも何も決まっていませんでしたし、僕自身、運用の経験もなかったんですが、「やりますよ。できます。大丈夫です」って請け合っちゃった(笑)。でも、自分なりに勝算はあったんですよね。その頃はソーシャルメディアの黎明期で、その面白さに夢中で朝から晩までずっとやってましたから。

 続けている中での変化も予想外のもので面白かったんです。僕は最初、遠慮してそれほど振り切ったツイートをしてなかったんですが、たまにギャグやボケを入れてたんですね。ネット文化はそういう遊びをしたほうがウケますから。企業の人からはいつか怒られるんじゃないかと思いきや、大評判になってしまって。結果、どんどん人気を集めて、着ぐるみができるほどのキャラクターを作り上げることができたんです。とりあえず「やります」と手を挙げて、そこからリサーチしたり行動したりしながら、どうするか考えて、軌道修正して進めていく。そこは僕たち、共通しているような気がしますね。

伊藤:本当にそうですね。米田さんも雑誌や本、ウェブの編集というお仕事以外に、かなり幅広いことをやっていらっしゃいますし。

米田:気づいたら常に10個くらいのプロジェクトを同時並行で進めています。特に先ほどのツイッターのアカウント運用の仕事もそうだったんですが、「初めての仕事」や「初めての現場」が好きなんです。それまでの蓄積を活かすより、新しい分野に飛び込んで毎回「初心者」に引き戻されるほうが面白い。それは確かに怖いことだけれど、特にまだ誰もやっていない分野なら競争者もいないし、やりようがいくらだってある。自分がそのジャンルのルールをつくることができるわけです。そうやって開拓することが自分のモチベーションであり、喜びになっているんです。

伊藤:やったことのない分野に飛び込むのは、私も好きです。以前の「十分な実力や経験を積まないとやっちゃだめだ」という思考回路が、「やりながら考えたらいい」とか「やってから考えればいい」に変わってからは、「これは私にはできないかも」とはあまり思わなくなった。それよりも何かを始めるときに大切なのは、自分が好きか、嫌いか。それを今は一番に考えるようにしていますね。