人生は予測不可能なことだらけ
だからこそ副業、転職に意味がある

米田:僕の新刊『僕らの時代のライフデザイン』では、このソーシャルメディアの時代をどう乗り越えていくべきかと考えたとき、実は働き方も生き方も自分なりに作っていっていいんだということを、28人の事例を並べて紹介しているんです。自分なりに作っていいという論旨なので、押し付けるものではなく、あくまでも参考にしてもらったり、「こんなやり方もあるのか」って選択肢の一つにしてもらえたらと。

伊藤:本を拝読して初めて知ったんですけれど、意外なことに昔のほうが今よりもたくさんの職種があったんですね。面白いなと思いました。

米田:小さな仕事を自分の手で作って生きていくことをモットーにする仕事レーベル「ナリワイ」を運営する、伊藤洋志さんがおっしゃっていたことですね。現在の仕事の数はおよそ2000と言われているなか、大正時代には3万5000種くらいあったそうですよ。

10年後なんて誰にもわからない!<br />予測できない未来をどう生きるか?伊藤春香(はあちゅう)さん

伊藤:じゃあ昔は、1人がいろんな仕事を掛け持ちしていたんですね。

米田:まさにそう。たとえば江戸時代、士農工商の身分制度のなかでは農民と区別された人でも、生活のために行商人をやったり漁師をやったり、その都度いろんな仕事をやっていたはずなんです。それが明治、大正、昭和ときて敗戦後、「会社員」をはじめ、専業が重視されるようになってきた。

伊藤:それで仕事の数が減ったまま、今に至るんですね。

米田:もちろん職人さんしかり、1つの仕事を一生かけてやる、というのは清いというか、美しい生き方だと思います。でも、そうじゃない人生の可能性があってもいい。さきほどの「ナリワイ」の伊藤さんは、生活と近しい小さな仕事を複数持つことで自分らしい人生を歩んでいますが、一方でたとえば料理好きが高じて40代でITプログラマーからシェフなんかに一躍転身する人がいたっていいと思うんです。

 どんな可能性が自分に秘められているかなんて、正直誰にもわかりません。さっきの「いつでも初心者でいたい」ということにも通じるんですが、「この先の人生が読めてしまう」と思ってしまうことの方が損をする感じがするんですよ。年齢を重ねていくとそうなるものだし、それは保守的になるってことなのかなって。

伊藤:自分の信じた方に向かって職を変えたり、いくつも職業を持ったりすることに対して、ポジティブでいたほうが楽しい、と。

米田:本にも出てくるのですが、「一定のお金を稼げたら結婚する」とか、「子どもが大学に入ったら引退して好きなことをやる」とか人生に順番をつけるのをやめ、やりたいことを全部同時にやってみることにした、という方もいました。つまり、それまでの順を追っていく「縦」型の人生プランを「横」に倒してみたわけです。

 僕がここ数年で強く感じるのは、今の時代って人生を「逆算」できなくなっている、ということです。震災もありましたし、未来予測なんて誰もできない。僕も会社が倒産するとなって独立したんですが、フリーランスになるなんて、それまで思ったこともありませんでした。将来がどうなるかわからないのだから、プランを持つこと自体、意味がない気さえしていて。正確に言えば、途中変更することが前提のプランというか。

伊藤:同感ですね。大学時代に手帳をプロデュースする機会があったのですが、そのとき10年後を書く欄を設けたんです。当時は「10年後はこういうことをしていたい」と自分で想像しておいたほうがいいんじゃないかと思ったから。でも社会人になってハッと気づいたんです、実際は3年後も予想できないじゃないか、って。私の場合も10年勤めるつもりで電通に入り、コピーライターになったけれど、実際は2年半で辞めてしまった。まさか自分が2年半で会社を辞めるとは思っていなかったし、その1年前に中部支社に転勤になったときも、自分が名古屋に住むなんて全然想像していなかったし。

米田:人生って、本当に予測できないことのほうが多い。恋愛だって誰と出会うかなんか絶対にわからないし、仕事だってそうですよね。僕のように、転職や独立のタイミングなんて入社のときは誰も読めない。だから、コントロールできない偶然をどうやって受けとめるか。それにかかっているような気がします。

伊藤:そう、逆に今では自分の人生を予想するなんて、傲慢だなと思うくらいです(笑)。

米田:ほんとに。だから、逆算よりも今に集中して、1個ずつ積み上げてゆくほうが合理的なんですよ。(後半へ続く)※3/26掲載予定です


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