スポーツ界をビジネスの視点から見る「スポーツと経営学」。第9回は、全米で最大の人気を誇るスポーツイベント「スーパーボウル」を題材に、ブランディングの要諦について考察する。

“Greatest Super Bowl ever?”

 今シーズンのNFL(National Football League、全米プロフットボールリーグ)も、現地時間2月3日の第47回スーパーボウルをもってすべてのゲームを終了した(スーパーボウルの回数は慣例としてローマ数字で表記するが(例:47→XLVII)、本稿では分かりやすさ優先で通常のアラビア数字を用いる)。

 ジム・ハーボーとジョン・ハーボーによる史上初の兄弟ヘッドコーチ対決、史上有数のディフェンス選手レイ・ルイスの引退試合という個人にまつわる話題もあれば、今シーズンのNFLに大きなインパクトを与えたオプションプレー(クォーターバックのランの選択肢を最初から織り込んだプレー。カレッジでは定番プレーだが、クォーターバックの怪我を嫌うプロではほとんど見られなかった)がスーパーボウルの大舞台でも通じるのかといった戦術面の話題もあった。

 何より、1980年代から90年代前半にかけて黄金時代を築き、全米のみならず日本でも人気の高いサンフランシスコ49ersの18年ぶりの大舞台復活と、ハードプレイが売りのボルチモア・レイブンズ――プレーオフではペイトン・マニング率いるカンファレンスナンバー1シードのデンバー・ブロンコス、トム・ブレイディ率いるナンバー2シードのニューイングランド・ペイトリオッツという、リーグを代表するエリートクォーターバックが率いる強敵を相次いで敵地で撃破した――の戦いというマッチアップ自体にも非常に高い関心があった。

 ゲームそのもののも期待にたがわぬ好試合で、結局49ersがリードするシーンはなかったものの、同点、逆転の可能性のあるシーンは随所にあり、最終スコアは34-31の3点差。最後の最後までどちらが勝ってもおかしくない試合であった。試合終了後にはWebでも“Greatest Super Bowl ever? ”の文字が躍った。

 視聴者数こそ、途中で数十分間の停電というアクシデントがあったことと、一時は28-6と22点差がついたことで、昨年(史上最多の1億1130万人)の記録はわずかに下回ったが、それでも全米で1億840万人がこの試合を観、視聴率では昨年(47.8%)を上回る、48.1%を記録した(データソースにより若干の差がある)。ちなみに、スポーツ番組としては当然、全番組を含めても、アメリカのテレビ史上の高視聴率ランキングの上位は、ほとんどスーパーボウルで占められている。多民族国家で英語を喋れない人も多いアメリカで40%超という視聴率は、日本の感覚では60%超の視聴率に相当するのではないだろうか。

 放送を担当したCBSが30秒間のスポットCM枠につけた400万ドルという値付けは昨年の平均350万ドルを上回ってこれも過去最高を記録したが、CBSの担当者によれば、それでも広告枠はすぐに埋まったという。

 試合数が違うとはいえ、MLB(Major League Baseball、北米のプロ野球リーグ)のワールドシリーズの平均視聴率が2012年シーズンには史上最低の7.6%だったこと、NBA(National Basketball Association、北米のプロバスケットボールリーグ)ファイナルのそれが10.1%だったことを思えば、この数字の突出ぶりはやはり目を引く。

 スーパーボウルが最高視聴率を記録したのは31年前、1981年シーズン(82年1月開催のスーパーボウル)の49.1%だが、その間、ほぼコンスタントに40数%の視聴率を維持し、最近はさらに微増の気配があるのは、これだけニーズが多様化している現代では驚異的である。