子どものころから金融や経済の知識に触れさせるべき

出口 僕は、教育を「人間が大人になって家を出たときに、ひとりで生きていくための武器を与えること」と定義しています。だとすれば、真っ先に伝えるべきは18歳あるいは22歳になったら、家を出るんだということです。そして、家を出てひとりでご飯を食べていけるだけの物の考え方、金融や経済に対するリテラシー、人間との付き合い方などを教えるのが教育本来の使命なのです。

山口 その通りだと思います。僕は慶応義塾高校の社会科ゼミで、ファイナンスやビジネスモデルについて年に数回教えているのですが、高校生にも共感してもらっています。慶応高校といえばエリートですが、18歳の若者たちも、僕の教える知識が自分のサバイバビリティーを助けるということを直感しているように見えます。できれば、もう少しそうした知識が広がっていく必要があると思います。

出口 僕も最近、小中学生のマネー教室に講師として呼ばれたのですが、子どもたちのレベルが高く、厳しい質問をぶつけられてタジタジになってしまいました。

山口 どんな質問だったのですか。

出口 生命保険の保険料の仕組みを説明しようと、こんな質問を投げかけました。「10人の人がいて、そのうちの1人が亡くなったときに100円の保険金をあげると考えたら、みんなからいくら保険料を集めればいいですか」

 答えは10円です。10人から10円ずつ集めたら100円になるので、亡くなった人に集めた100円を渡せばこの仕組みはうまく回ります。

「保険料の仕組みは、すごく簡単なんですよ、みなさんわかりますよね」
 そう言ったとき、中学1年生の男の子がスッと手を挙げて、次のように言ったのです。
「理解ができません。だったら、出口さんの給料はどこから出るのですか?」

 僕はひっくり返ってしまいました。
「ごめんなさい。今のは製造原価の話です。コミッション(手数料)は、別にしっかりもらっています」
「それならわかります」

 彼は納得して席に座ってくれました。小学校高学年から中学生ぐらいになれば、物事をきちんと判断する能力は身についています。良い教育をしさえすれば、リテラシーは身につくと思いますね。