高齢者はどのように歳をとるべきか

山口 若者が早く自立しなければならない一方で、現代は高齢化社会を迎えています。20年前に比べれば、平均年齢が11歳も上がっているのです。人間は生物としての役割を終えてから、40年も50年も生き続けなければなりません。人類がかつて経験したことのない生物的本質からかけ離れた状況のなかで、人間はどのように歳をとっていくべきなのでしょうか。

 平均寿命が延びたなか、60歳で動けなくなる人がいる一方で、出口さんのように60歳で起業する人もいます。でも、すべての人が生き生きと生きていかなければ、経済的負担の問題も含めて社会全体が成り立たないだろうと思うのです。

出口 おっしゃる通りです。『ゾウの時間 ネズミの時間』の著者である本川達雄さんが、2011年に『生物学的文明論』という本を出されて、次のような趣旨のことを書かれています。

「動物にとって最も大事なことは、次の世代を育てることである。だから、歳を重ねた人間の役割は、ひたすら若者が頑張れるように、ちゃんと赤ちゃんを産んで育てられるように貢献することである。それは太古の昔からそうだった。ホモ・サピエンスが50人ほどの群れで移動しているとき、歳をとった人は小さな子どもの面倒を見て、若者が狩りに行く間の留守をしていた。つまり、歳をとった人間のすべきことは、若い世代に引き継ぐことであり、若い世代を応援することに尽きる」

 僕も、その通りだという気がします。

山口 なるほど。

出口 確かに高齢者の数は増えていますが、役割そのものは太古の昔から変わっていないのではないでしょうか。だからこそ僕は、例えば相続税率を100パーセントにすべきだと思っています。その代わり、30代以下の若い世代に対する贈与税率を、0パーセントにするのです。

 歳をとった人間は、徐々に体力もなくなってお酒も飲めなくなってしまうので、若い世代にお金を渡して、彼らにお酒を飲んでもらったほうがいい。高齢者の役割は、人間として本来あるべき姿を、きちんと原点に戻って見つめ直すことだと思います。

(次回は3月22日更新予定です。)


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