「防災行政無線が鳴っていれば、妻は自宅に行かなくて済んだのに…」

 そうBさんは悔しがる。

 震災では、このようにして、家族を迎えに行こうと閖上に向かった人たちも犠牲になったという。

異常に気づいたのは震災当日の午後7時
防災無線が故障した理由とは

 遺族でつくる「名取市震災犠牲者を悼む会」では、昨年5月29日の第1回目以降、これまで3回にわたり、名取市長に公開質問状を提出してきた。

 なぜ、防災行政無線が稼働しなかったのか。同年6月12日付けの市の回答書によると、当日の経緯について、こう明らかにしている。

<3月11日14時49分、大津波警報発令に伴い、市では災害対策本部を設置し、閖上・下増田地区の全域に避難指示を決定し、直ちに消防本部が大津波にかかわる避難誘導の広報を開始しました。

 14時57分より15時59分までの間、市役所においては庁舎3階の無線室より、消防本部は通信指令室から防災行政無線により、合計14回、避難指示の広報を実施しましたが、市役所3階(無線室の)の操作卓では、(機械が)正常に稼働し、画面上で異常を示すランプの点灯がなく、市役所と消防本部ではお互いの放送が操作室から聞こえている状況であり、当然、閖上・下増田地区に設置の屋外拡声子局でも放送されていたものと認識しておりました>

 運用マニュアル上は、屋外拡声子局に異常があった場合、無線室に設置されているモニターに表示されることになっていた。そのため、各子局の音声を確認することにはなっていなかった。

 こうして故障の異常に気づいたのは、午後7時頃のこと。災害対策本部の対応を知らせようとしたとき、市役所屋上の屋外拡声子局から放送されず、公民館でも放送できないことがわかった。

 市では、すぐに設備の点検を依頼するため、設置業者に電話やメールで連絡を取ろうとしたものの、連絡がつかなかったという。

 そもそも防災行政無線は、有事の際に国からの情報や災害発生時などに、市からの緊急情報を伝達する手段の1つとして設置された。とくに、閖上・下増田地区では、津波災害に備えるために設置されたものだった。