日本ではM&Aが
成功しにくいのはなぜか

村井 今買収のお話が出ましたが、買収を決める際に、特に注目するのはどういった点でしょうか。

安本 買収する会社の真の姿を探るのは本当に大変です。どんなに綿密な調査(デューディリジェンス)を行っても、一緒に仕事をしてみないとわかりませんからね。ファーストリテイリングが今まで買収した会社は、成功と言えるものが少なく、私もいろいろと勉強させてもらいました。

 相手企業が提示する金額は、経営計画の予想数字を現在価値に割り引いた数字ですから、その通りになった試しがない。さらに、仲介する人間も手数料欲しさにふっかけてきますが、どう考えても企業価値はそんなに上がらない。日本のM&Aは上手く行くケースの方が珍しいと思います。
  ですから、原則として「助ける」とか「救ってあげる」M&Aはやめることにしたんです。

村井 日本はアメリカと違って、成長期に売りたい会社はあまりないのではないでしょうか。衰退期に入ってから助けて欲しくて売りに出すパターンをよく見ますね。

 ただ、最近はIT関係の若い社長が数年で会社を売って、その資金を元手にまた次の事業を展開する。それを繰り返していくというようなケースもあるようですね。

安本 数年で会社を売って儲けている経営者は、本当にやりたいことをやっているのか疑問ですね。ITバブル期の社長も、上場した途端に高級車に乗ったり別荘を購入したりしていましたが、結局は会社を継続できなくなってしまった。そんな失敗例をたくさん見てきました。起業した時の思い入れを強く持ち続けることは、とても大事なことだと思います。
   それを共有した人たちが社員として皆で支え合い、協力会社や委託工場の人たちとも高い志を共に抱いて、一緒に大きくなっていくという姿が一番だと思いますね。

村井 いったん採用した会計処理のルールは継続して適用し、みだりに変更してはいけないという、会計士の根本中の根本である「継続性の原則」と基本は同じことなのでしょうか(笑)。会社経営も継続してこそ、強い会社に成長していくのですね。

 (つづく)
                        (取材・文 佐藤祥子)


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