ブルース・ウィリス主演のダイ・ハード/ラスト・デイが大ヒットしている。

 映画のコピーがいい。世界一、ツイていない男、運の悪さは遺伝する…。

ツイていない男

 この間、講演会で自己紹介する際、このダイ・ハードをまねて「世界一、ツイていない男です。二度も警察や地検の強制捜査を経験しました。今日は、そのついていないところを少し持ち帰っていただければありがたいです」と自虐的に言ったら、会場が沸いた。

 若い頃の苦労は買ってでもせよ、と言うが、それは間違いだ。苦労なんかしてもロクなことはない。苦労せずに一生を送れる方が、どれだけ幸せなことか。

 苦労が続くと何が悪いと言ったら、「自分はなぜこんな目にあわされるのか」という怨みにも似た気持ちになるということだ。

 東日本大震災が発生して2年になるが、まだまだ復興に程遠い現実を見る時、被災者の皆さんの中には「なぜ自分なのだろう」というお気持ちを抱かれて、苦しまれる方も多いのではないかと同情を禁じ得ない。

 かくいう私も大きなトラブルに巻き込まれる度に、「なぜ自分なのだろう」と怨みを抱き、生きているのさえ苦しくなる。他人の幸せそうな様子を見る度に、その怨みは強くなる。これはキリストだって、ここでとりあげる孔子だって皆、同じだ。

 色々な解釈はあるにしろ、キリストは十字架上で磔になった際「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」(わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか)と叫んだし、孔子は、最も期待していた願淵という弟子が死んだ時「噫(ああ)、天予(われ)を喪(ほろ)ぼす。天予を喪ぼす」と身も世もないほど嘆き悲しんだのだ。