懸案だった防衛省などへの過大請求問題に決着がつき、2010年の社長就任当初から掲げていた、「2013年度までに売上高4兆円、海外売上高比率40%」の目標達成に向けて再出発を図る。一方、事業では三菱重工業と日立製作所が統合を発表した火力発電システムに関心が集まる。今まで三菱重工と一心同体で火力事業を運営してきた三菱電機だが、方針転換は視野に入っているのか。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

売上高4兆円達成の秘策あり<br />二つの買収案件が頭の中にある<br />――山西健一郎・三菱電機社長インタビューやまにし・けんいちろう
大阪府出身。1975年京都大学工学部卒業後、三菱電機に入社。生産技術センター副センター長、生産技術センター長を経て、2006年常務執行役(生産システム担当)。上席常務執行役、半導体・デバイス事業担当、半導体事業部本部長などを経て、2010年社長に就任。

――三菱重工と日立の火力事業統合による三菱電機への影響はどれほどなのでしょうか。

 この質問は非常にたくさんいただくんですが、構造的に影響は少ないです。

 2社の事業統合でできる新会社の売上高規模は、1兆数千億円。それと比べて、三菱電機が火力事業で供給する発電機の事業規模は、だいたい600億円。

 だから、(新会社の)全火力発電システムの中で(三菱電機の)発電機が占める割合は1割にも満たない規模感。(大きな発電システムの中における)キーパーツの一つという位置づけです。

 それと、三菱重工と日立が一緒になって売上高を拡大していくと、われわれに来る注文も増えていきます。ですから、高性能、高品質、低価格といったことを今後も追求して、統合新会社のバックアップを進め、むしろ一緒になって事業拡大をしたいというのが、今のところのスタンスです。

 ただ、もう15~16年度くらいまでの商談が決まる時期なので、プラスにしろマイナスにしろ、影響が出るのはおそらく15年よりもう少し先だろうと思っています。

――新会社へ自社の火力事業を合流させるという考えはないのでしょうか。

 数字的に見てありえないと。ありえないと言ったらおかしいんですけど。

 さっき申し上げたように、1兆数千億円規模の会社に、600億円という三菱電機の発電機事業を入れたとしても、三菱電機には売上が立たない。

 さらに、持分法(適用会社)でもないから利益も入らない。そういうところと一緒になっても、何のメリットもないですね。そういうことはまったく考えていないです。