シンプルで高機能の商品を手頃な価格で提供する

――坂上
 数字的には、平成22年の売上が1691億円、23年が1775億円、24年度の予想として1908億円ということで、対前年107%。経常利益も同じように142億円、161億円、194億円と、対前年比120.6%という利益の伸び。そして、経常利益率が予想で10.2%と大変順調な業績ですが、これには御社が「No.1」だというポイントが関わっているのでしょうか?

松井
 そうですね。最大の強みは商品力です。おもな取扱カテゴリでは生活雑貨が一番多く約55%、衣料品が35%、食品が10%ほどで、いずれも商品力が上がらなければお客様の支持を得られないと考えています。

――坂上
 どのように商品力を高め、どこで他社と差別化をしているのですか?

松井
 それはとても簡単です。弊社の場合は「無印良品のコンセプト」が圧倒的に強い。最初にも申し上げたとおり、これに賛同して、好きだという方がリピートするお客様になってくださっています。

――坂上
 そのコンセプトとは?

松井
 1つは素材です。弊社の商品は基本的に綿や麻、絨毛など天然素材のみを使います。余計な染色や漂白の工程は一切行ないません。天然にある素材そのものを、そのまま使うわけです。

本質的な機能に特化させて、クオリティを犠牲にすることなくコストを下げています。オーガニック洗いざらしシャツ

 それから商品のもつ「本質的な機能」を追求しています。たとえばタオルならきちんと汗を吸い取ってくれる、速やかに乾燥してくれる、肌触りや感触が良い……。こうした機能の面を徹底的に高めていくのです。価格も重要で、決して安売りしているわけではないのですが、商品がもっている機能や品質に比べれば、相対的にリーズナブルな価格帯に収まるようにしています。

――坂上
 価格の安さにもこだわりがあるのですね。

松井
 無印良品は「わけあって、安い」のキャッチフレーズからもお分かりのように、百貨店のクオリティの商品を7掛けで売りたい、という思いからスタートしました。今はおそらく百貨店で売られているのと同等以上の商品を、それより安価に提供できていると思います。オーブントースター1つ取っても、弊社では「パンを焼く」という本質的な機能に特化させて、クオリティを犠牲にすることなくコストを下げています。さらに包装の簡略化なども徹底し、無駄を省くことで「わけあって、安い」を実現しています。

本質的な機能に特化させて、クオリティを犠牲にすることなくコストを下げています。再生紙メモパッド

――坂上
 シンプルで高機能、高品質な商品を、より手ごろな値段で提供するということですね。

松井
 日本には昔から、禅や茶道といった簡素を旨とする文化風土、美学があります。これが無印良品の商品の根底にも流れています。簡素で飾りを省き、機能に特化する。これが他との一番大きな差別化になります。