ポーターとドラッカーの
意外な共通点とは何か?

 日本ではあまり知られていませんでしたが、ポーターはかれこれ10年ほど前から、フィランソロピー(企業の社会貢献活動)やCSR(企業の社会的責任)について発言しています。

 いわく、こうした慈善活動や社会貢献活動は、ビジネスや企業価値に寄与しないのであれば、やめるべきである。むしろ、社会的な課題を解決することによって、社会と企業の双方に利益をもたらすビジネスを創造すべきである、と。

 なるほど、一方の手で金儲けをし、もう一方の手で慈善を行うという姿勢は、株主をないがしろにしているばかりか、贖罪(しょくざい)と揶揄されてもしかたがありません。

 このように、社会的価値と経済的価値を同時に実現するという考え方は、一般に「共通価値の創造」(Creating Shared Value)、通称「CSV」と呼ばれており、リーマン・ショック以降、ちょっとした流行語になっています。

 実はこのCSV、そもそもはグローバル食品メーカーのネスレが2005年に打ち出したものです。その時に協力したのが、ハーバード・ケネディ・スクールのマーク・クラマー氏で、彼はCSVを普及させるために、ポーターと一緒に、ファウンデーション・ストラテジー・グループ(FSG)という非営利のコンサルティング会社を設立しています。

 さて、先ほどのダボス会議のパネル・ディスカッションに話を戻しますと、何とポーターから「企業はその基本的な『目的(パーパス)』を冒とくしてきた」という発言が飛び出します。

 ここでポーターが言い及んだ「基本的な目的(パーパス)」とは、もちろん利潤の最大化のことではありません。彼とクラマーが書いた論文を見てみると、「社会やコミュニティが抱えている問題に取り組むことを通じて共存共栄を図る」ことのようです。

 ポーターは、この時のダボス会議だけでなく、CSVをテーマにした講演では、その締め括りに「ビジネスの目的(パーパス)」と題したスライドを映して、社会的価値と経済的価値を同時に実現することはけっして不可能ではなく、むしろそこには大きなチャンスが潜んでいると力説しています。

 ここで「おや?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ポーターよりもずっと前に ― おそらくは半世紀以上前 ― 企業/ビジネスの目的(パーパス)の重要性を訴えてきたマネジメント・グールーがいましたね。そう、だれあろう、ピーター・ドラッカー氏です。