面接では、語る内容以上に、気持ちを大事にする

安藤 質疑応答の時間がそろそろじゃないではないでしょうか(笑)。

自分を大きく見せようと<br />すると、失敗する<br />【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(後編)

司会者 ちょっと私も質問したいのですが、私はまさに就活生です。よく学生生活で一番頑張ったことは何ですかと聞かれるんですが、みなさん、そう聞かれたら、どう答えましたか。

キム その質問を真に受ける必要はないと僕は思います。大学の4年間、何をしてきたかということ自体が大事なのではなく、これは自己PRにしてもそうなんですが、質問に対する答えの内容が占める評価の率というのは、3、4割だと思っているんですね。それよりも、その内容を語る自分自身の気概とか、声のトーンとか、あとは目線が大切です。

僕は視線をすごく大事にしていて、自信がなければ視線がまっすぐ行かないんです。でも自分に自信がなくても、相手の目をまっすぐ見ることができると、自分の中に自信が生まれてくる。なので、まず視線を定める。
 あと、会話を文章にすることを考えながら、普段からしゃべる。僕は、いつの会話においても自分が語っている、発するすべての言葉が文章になったときに、そのまま本になるように頭の中で整理しながらしゃべっています。

 僕がゼミ生に対して言っているのは、3分自己PRがあったとき、中身よりも話す気持ちを大事にするということです。例えば、5歳のときに生き別れた父親に、20歳になって会う。駅で3分だけ時間がもらえたが、もう永遠に会えないかもしれない。そのとき、自分の父親に、自分の生きてきた20年をどう凝縮して伝えるか。さらに、これからの人生を、自分はどう生きていきたいか。それを3分に集約する。そのくらいの意識を持って言葉を選んだり、話すことを心がける。

 そんなときに、大学時代にテニスサークルのリーダーをやりました、とか、そんな話が本当に入ってくるかどうか。自分自身の本当の人生を相手に伝えたいわけですよね。多くの人が話す、似たような定型的な自己PRをしても仕方がないわけです。
自分はこの3分に人生のすべてをかけているんだという気概、決意を持って言葉にする。実際にしゃべる。そうすると、相手に伝わるものはまったく変わっていくと思います。体を通じて伝えようとする工夫です。自分の中で強い意識を持って面接にのぞむ。そうすると、発するオーラが変わるんです。相手もそれを感じると僕は思います。

本田 そうですね。あと僕が思うのは、かっこつけて話しちゃ駄目だということですね。企業の面接って、キムさんも言っていた通り、別に内容にはあまり期待してないんです。僕も面接をたくさんしましたが、学生ができるすごいことって、社会人からすれば大したことではないわけです。僕は学生時代に会社を設立して上場させました、とか言われたら、こいつすげえなと思いますけど、そんなこと以外はそれほどレベルは変わらない。
 むしろ本人が語っている正直な思いというか、かっこつけて言ってないな、準備しまくって、すごいストーリーをつくって、この会社に入るために無理をして話をしているな、というのは逆効果になるんです。

 まさにキムさんが言ったみたいに、本当に素の自分で、生き別れした親にたまたま会って、3分しかなくて、っていうときの素直な思いを語る、くらいのイメージはいいと思う。それこそ駄目なところは僕はこんな駄目、本当にわからないことはわからない、としっかり言っていい。そもそも全部スラスラ答えられるなんて期待していないし、未熟な自分でいいと思うんです。