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出口治明の提言:日本の優先順位

再度問う。「就職活動は卒業後に」

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第79回】 2013年3月26日
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前回のコラムで「就職活動は大学卒業後に」と述べたところ、約78%の皆さんに賛同していただいたが(3月24日21時現在)、別途、読者の方からいくつかご意見もいただいた。

 1つは、「自由主義経済の下でこうした取り決めを行う事自体がおかしい。採用活動は企業の自由に任せるべきではないか」という趣旨のものであり、もう1つは「就職が1年延びるだけではないか。その分、家計の負担が増えることをどう考えるのか」という趣旨のものだった。そこで、今まで書いてきたことの繰り返しになるが、再度、私見を整理してみた。

自由主義経済と
政府の介入は矛盾しない

 原理・原則論として論ずれば、採用活動は企業の自由に属するものであり、市場での自由競争に委ねられるべきものであることは、自明の事柄であって、議論の余地はないと考える。しかし、現実には、世界中のどこにも、完全に自由な市場など殆ど存在しない。特に、学生の就職・採用活動については、少しでも早く優秀な学生を確保したい企業サイドの思惑と、少しでも長く学業に専念させたい大学サイドの思惑が正面からぶつかることもあって、早くも1952年には企業と大学の間で就職協定が結ばれている。

 就職協定は紆余曲折があって1997年に廃止されたが、同年以降は大学側(就職問題懇談会)が「大学、短期大学及び高等専門学校卒業・終了予定者に係る就職について(申合せ)」を、企業側(経団連)が「採用選考に関する企業の倫理憲章」をそれぞれ定め、相互に尊重して行うという方式が採られて現在に至っている。

 政府は、現在の倫理憲章が定めている大学3年生の12月就活解禁を4ヵ月後ろ倒しにするよう、経団連に要請する意向のようだが、前回のコラムでは「同じ口を出すなら、どうして卒業後にと英断できないのだろうか」と指摘した経緯がある。この問題が、原則論(即ち企業の自由に委ねる)で解決できるのであれば、それに越したことはないが、これまでの歴史を見る限りでは、国益に資する方向での解決は、正直言ってかなり難しいのではないか。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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