強い会社になれないのは
間違ったコスト削減が原因

村井 アベノミクスで少し明るい兆しも見えてきましたが、中小企業はまだ厳しい。不景気で資金繰りが厳しくなり、コスト削減に頭を悩ます経営者も多いと思います。強い会社をつくるには、どんな工夫が必要なのでしょう。

安本 繰り返しになりますが、コスト削減をする以前に、経営というのは継続しなければ意味がありませんし、会社が成長し続けてこそ存続につながります。そのことを前提にコスト削減を行わなければいけません。何でもかんでもコストカットすればいい、リストラすればいいという考え方は、成長志向ではありませんし、実際には身を縮めるだけですよね。

 コストカットの方法はじっくり考えればアイデアが出てくるはずです。例えば、仕入先と交渉してコストダウンに協力してもらえるようお願いする、同じ業種の会社と共同仕入れしてコストダウンを図る。他にも仕入先の変更や競争入札の導入など、できることは何でも試みるべきです。

 コストカットを理由に投資をやめるケースもよく見ますが、投資をやめれば会社は成長できません。そこをしっかり見極めて実行することです。

村井 コストをかけるべきところにはかける。削減するべきところは削減する。その線引きはどこにあるのかというと、「会社の成長」にある。会社が成長するための投資は必要ですし、物を売るなら開発費や広告宣伝費、優秀な人材を集めるための人件費なども必要でしょう。

安本 会社を成長させるには、負えるべきリスクはたくさん負った方がいいと思いますね。リスクを負わなければその先が見えてきませんし、それによって行動を起こすこともできませんから。

村井 前向きに、あの手この手を考えてアプローチしていかなければいけない。私も「将来リスク対応コスト」は必要だと思います。ついつい「経費削減は利益につながる」と考えがちですが、これは「今日の経費削減は、今日の利益につながる」だけで、「明日の利益につながる」わけではないことを認識しなければなりません。

安本 その通りですね。リストラやコストダウンを考える時、結果的にお客様へのサービスや品質が低下する方法ならやめた方がいい。これは非常に大事なことです。お客様や取引相手に迷惑をかければ、ますます離れていってしまいます。方法を間違えてしまうと、利益につなげるどころか倒産までの道のりが早まるばかりです。

 リストラ=人員削減というイメージが浸透していますが、リストラの本来の意味は「再構築」。そういう視点や成長志向を持って取り組むべきだと思います。重要なのは、「誰に喜んでもらいたいのか」を忘れないことです。

村井 やはりそこがポイントですね。会社は経営理念によって強くなっていく。
 ところが、経営理念を忘れてしまって、売上や利益に捕らわれたコスト削減やリストラをすると、昔の郵便局のように大失敗するわけです。大規模なリストラで仕事が回らなくなり、お客様の元に確実に郵便物が届けられない。そればかりか、疲弊した現場では未配達を隠ぺいするために大切な郵便物を廃棄までしていました。利用者にとっては大迷惑ですよ。

 会計思考を身につければ、自然と数字の見方も変わってきます。会社を支える経営理念のもとで数字に翻弄されることなく、数字をしっかり理解してコントロールしていく。それを地道に積み重ねていくことで、厳しい経営環境の中でも成長し続ける、強い会社に変わっていくのだと思います。

ありがとうございました。

(取材・文 佐藤祥子)


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