与えられたイメージで
幸せになれる時代は終わった

鈴木:僕は今greenz.jpっていうメディアを編集しているけれど、最後はワークショップみたいに人と人が対話するきっかけ作りみたいなことが大切なんじゃないかな、という気がしていて。ウェブはあくまでもつながるきっかけ、何かが動き出すきっかけにすぎないのかな、と。結局、米田さんみたいにいろいろなことを見て考えた結果、「あ、答えって俺の中にあったんだ」とみんなに気づいてほしいんですよね。いろんなビジネスモデルやスタートアップの手法とかあるけど、最後は自分の中にある「何か」なんだと思う。

米田:きっかけやヒントは外からやって来るんだけど、答えは内にあると思う。欲望というとすぐに金持ちになりたいとかモテたいとかそっちにいくけど、本質的な欲望って、たとえば「自分の才能を全うしたい」とか「生きているうちにこの世界を知りたい」というものじゃないですか。世俗的な成功ももちろん1つの欲望だと思うけど、それは小さい頃から与えられたイメージが大きいから。

ほしい未来は、つくろう。<br />21世紀の幸せのデザインとは?鈴木菜央さん

鈴木:与えられたイメージで幸せになれた時代もあっただろうけど、もうないなと思うよね。ある意味でいろんな幸せのプロトタイプをみんな実験し始めているな、と感じます。

米田:僕の本では、フィールドワークを通して「こんな人がいたよ」と色見本みたいに例をたくさん並べて、そのなかで好きな色を2つくらいとって自分でカスタマイズしてね、と提案しているんですよ。そのほうが、自由度が高いなと思ったから。だって、メソッドを押し付けて人から考える力を奪ってもそれは幸福にはつながらないと思うから。

鈴木:そうだね。自分の幸せの定義は、それぞれがすればいいんだからね。まあ結局人生は有限なわけで。最期に「オモロかったな」って思うか、「もうちょっとこうしたかった」と思うか。その違いしかないっていうか。

米田:なんか俺ら、爺さんみたいな話してないか?(笑)で、ワークデザイン、仕事自体に関してはどうです?まあそんなに先のことは考えてないと思いますけど。

鈴木:先ほども言いましたが、やっぱり仕事と家族、健康のバランスをどういうふうにとるべきか、がテーマですね。要するに家族との時間や健康を一定以上に保つためには、仕事を減らさなきゃいけない。そうなったとき、仕事の質とか意味を考えるようになったんですよ。意味があると思えばやるし、意味がないと思えばやめるべきなんだけど、ただ生計も成り立たせなきゃいけないから、そうも言っていられない部分もある。だから徐々に毎年少しずつ、本当の意味で自分が納得できるものに仕事の質を近づけていこうとしていて。

米田:具体的には、どういうふうに移行しているの?

鈴木:やっぱりどうせやるんだったら世の中の役に立つ仕事をしたいなと思うので、できるだけそういうものを選ぶようにしています。また、いただいた仕事のなかでも、頼まれてもいない工夫をあえて施すことで、自分にとって意味がでてくることもある。そういう仕事の仕方をできるだけしたいな、と。あと、地元のいすみ(千葉県いすみ市)でゆっくり庭をきれいにしたり、田舎らしい、豊かな暮らしがしたい。さっきの話のとおり、結局みんな本質に気づくための時間が、なかなか作れないんですよね。

米田:都会では「最初に結論から言って」ということを求められやすいから。でも自分で体験しないと分からないことってやっぱりあるし、それぞれがそこから答えをどう導いていくかだから。

鈴木:そうそう。わざわざ電車にのって遠いところまで行って、スマホも5ドルで取り上げられて、ちゃんと自分と向き合う時間を作るのってすごく大切。そこに個人的にすごく興味があるんですよね。まあ高尾山に近いのかもしれないけど。

米田:じゃあ、まずは山に一緒に行きますか(笑)。

鈴木:いいね、行きましょう(笑)。で、そのときスマホはどうするんですか?

米田:いちおう持って行きますけど、登ると圏外になるので心配無用です、ハイ(笑)。今日は楽しいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。(対談了)


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