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3月26日 15時41分
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第35回 消費マインド改善に見るアベノミクス効果 - 広木隆の「投資の潮流」

デパートでモノが売れているようだ。日本百貨店協会が発表した先月の全国の百貨店売上高は、前の年と比べて0.3%増えて2ヵ月連続で前年の実績を上回った。特に海外ブランドのハンドバッグや高級時計など高額商品の売れ行きが好調だという。そう聞くと、まっさきに思い浮かぶのは「資産効果」である。資産効果とは、株式や土地など保有する資産の値上りによって消費が刺激されることをいう。

2010年11月、米国でQE2が発動された直後にベン・バーナンキFRB議長は自らワシントン・ポストに論文を寄稿しQE2の正当性を訴えた。そのなかで議長は、量的緩和は株高など資産価格の上昇を通じて消費を刺激し経済成長に寄与するとはっきり述べている。FRBによる金融政策は資産効果を狙った面もあるのだ。

しかし、資産効果は米国では有効に働くかもしれないが、日本ではどうだろうか。なにしろ日本では個人金融資産に占める株式や投資信託の比率が少ない。日銀が昨日発表した2012年10~12月期の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産の残高は12月末時点で1547兆円。前年と比べて約3%増加した。昨年後半からの円安・株高の流れを受けて、家計が保有する株式や投資信託などの評価額が大きく上昇し、家計の金融資産残高を押し上げたという。家計の株式・出資金は106兆円と前年比で12%強増加した。伸び率は05年以来7年ぶりの大きさとなった。投資信託は61兆円と13%強増加し、09年以来3年ぶりの伸び。しかし、ともに二桁で伸びた株・投信合わせても167兆円だ。金融資産全体のやっと1割に届いたところである。

不動産価格も下げ止まりが顕著だが、まだ資産効果を発揮するほどの回復には至っていないだろう。一部の富裕層を除いて、デパートで高級品を買うような消費マインドを刺激するほど資産効果が表れているとは、どうにも腑に落ちないところがあるのだ。

もうひとつ考えられるのは、駆け込み需要である。売れているのは海外ブランドのハンドバッグや高級時計などと聞く。円高是正が急速に進んだせいで、海外ブランドは値上げが相次いでいる。例えばルイ・ヴィトンが2月半ば、バッグなどの一部商品を平均約12%値上げしたのに続き、ティファニーも4月から、ジュエリー類などを平均約10%値上げする。単価が高いだけに二桁の値上りは購入者には痛手だ。更に値上りする前に買っておこうという気にもなるだろう。

また、企業のなかには賃上げを検討するところも出始めた。今年の春闘では各社軒並み満額回答である。所得増の期待が持てるようになったことも、消費を支えている面は多少なりともあるのかもしれない。

とにかく、百貨店売上高の好調に見られる消費マインドの改善は、アベノミクスがもたらした各効果の「併せ技」だろう。一部に資産効果、一部に円安を背景とした駆け込み需要、また一部に所得増や景気回復期待などがあり、それらの複合的効果の表れだと見る。それを一言で表せば、インフレ期待の醸成に成功していると言えるだろう。安倍政権発足からのこの3カ月、アベノミクスは上々の滑り出しである。

1月22日付けの小欄で「バブルの予兆を知る方法は、株式投資と最も縁遠いと思われる人たちの言動を観察すること」と述べた。普段はおしゃれやグルメにしか興味がない若い女の子がマネー誌を読み始めたら「危ない」と思ったほうがいい。その時は「筆者が付き合っている女の子たちの口からは『ヴィトンのバッグ、買って~』としか出てこないから、まだ大丈夫である」と書いたが、全然、大丈夫じゃない。円安→値上げ→駆け込み需要で「買って」コールが加速する恐れがある。バブルを見分けるバロメーターを手放すのは惜しいが、破産と家庭崩壊の危機を免れるほうを優先、ここらで一気に関係を清算することにしよう。




(チーフ・ストラテジスト 広木隆)

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