前原誠司国土交通大臣が日本航空(JAL)に送り込んだ「JAL再生タスクフォース」(チーム前原)は13日、「途中経過は知らせない」としていた方針を突如変更し、JAL経営陣らに再建の素案を提示した。

 報道・取材を総合すると、その最大の特色は、前原大臣がこれまで示してきた「自主再建」の方針を撤回し、取引先銀行に2500億円を超す債権カットを求めるなど、外部に重い負担を要求する内容に変質したことがあげられる。

 その半面、JAL自身の自助努力としては、西松遥社長の辞任と整理する人員数の増加(当初の6800人から9000人に拡大)を迫ったのが目立つぐらいなのだ。

 このため、銀行や大株主は、再建が軌道に乗る保証はなく、とても支援には応じられないと反発するだけでなく、そもそもチーム前原が素案作りを行う法的根拠がない点を問題視する向きが増えている。

 「再生のプロ」と前原大臣がお墨付きを与えたタスクフォースはいったい、なぜ、このような反発を招き、合理性に疑問符が付く素案を打ち出したのだろうか。今後の見通しと併せて、その背景を探ってみた。

民間企業に国が再建チームを
送り込む根拠への疑問も

 チーム前原は、前原大臣が9月25日に、設置、JAL内部に送り込むと発表した。同大臣は、西松JAL社長が前日に説明した再建策を「実現可能性、或いは時間軸について、不十分だ」と決めつけた。そのうえで、「1日でも早く本来あるべき自主再建案をまとめるためにタスクフォースを立ち上げたいということを申し上げ、(訪米中の)鳩山総理から了解を頂いた」と述べた。首相の承認も得た組織だと権威づけをしたのだった。

 その5人のメンバーについては、「事業再生の実務をやって来られたプロの方々」と補足した。ちなみに、メンバーは、野村証券顧問の高木新二郎氏や、経営共創基盤取締役の冨山和彦氏など旧産業再生機構の出身者が構成員(5人)のうちの4人を占めている。

 ただ、前原大臣の説明にもかかわらず、当初から、こうした手法を問題視する指摘が存在した。というのは、民間企業であるJALに、こうしたチームを送り込んで、経営陣に代わって再建策を作ることを良しとする根拠が、一般法はもちろんのこと、国土交通大臣の所管の航空法という業法にもないためだ。

 その後、このタスクフォースの行ないがひんしゅくを買う“事件”があった。10月8日付けで時事通信が配信した記事に詳しいが、タスクフォース傘下の人員が「当初計画の3倍以上、延べ100人規模に急増」し、その「経費が10数億円以上で、ほぼ全額を日航が負担する方向で調整中」のため、「同社の財務への影響も懸念されている」というものだった。換言すれば、企業として生死の境をさ迷うJALの資産を貪るようでは、かつて、経営危機に陥った企業を買い叩き、転売によって暴利を貪ることが忌み嫌われた“ハゲタカ”となんら変わらないのではないか、ということだったのだ。