有名企業名がズラリ。
「就職実績」は信用していい?

―― 大学案内パンフレットにかかれている「就職率」はあてにならない。では、「就職実績」のほうはいかがでしょうか?

沢田 こちらも参考にしづらいですよ。大学階層が下位にいくほど見せ方がご都合主義になりやすい。
 よくある見せ方は、学部ごとにどんな業界へ就職したかの円グラフの掲載です。製造業32%、情報・通信関連27%、建築・不動産11%……という具合に、グラフがどのように計算されて作られたものなのか説明はありません。だから、%を見せられても、何かがわかるわけではない。
 で、円グラフだけでは恰好がつかないため、その下や横に内定獲得の実績企業名をずらずらと列記しています。有名な大企業の固有名詞をたくさん並べます。けれども、そのまた下に小さな字で「最近5年間の実績」となっていたりするわけです。

 それならまだ良心的なほうで、何の断り書きもない大学だって多いんですよ。うがった見方をすれば、人気企業の社名が堂々とトップに掲げられていたとしても、それは10年以上も前に親のコネで1人だけ内定が取れた「実績」かもしれない。

 就職の「実績」を示すなら、就職した企業ごとに、単年度の「実績」を載せなければ参考にならないですよね。誰がどう考えたって、本気で情報公開をする気があるなら、就職に関しては就職先の人数を具体的に明かすべきなんです。
 でも、それはないものねだりの理想論、という現実もあります。「実数」を明かせる可能性があるのは、上位校だけでしょう。そうじゃない大学だと、それこそ保護者さん世代が見て「なにこの会社?」という社名ばかりになってしまいますから。
 もし、就職の「実数」をありのままに出している大学があったら、その姿勢をおおいに評価してください。低い数字でもあえて発表していたらそれは従来の大学の悪しき慣習を改革しようとしているチャレンジにほかなりません。

(本コラムは、「大学図鑑!2014」からの抜粋です)
次回は4月12日更新予定です。

お話をしてくれた人
沢田健太(さわだ・けんた)
民間企業で営業職や人事職に従事。その後は、教育分野に転身。複数の大学にて、キャリア形成支援に携わる。現在の主な関心ごとは、「就職と若者の不安」「正解を求めようとする就職活動生の意識」「大学におけるキャリア教育の今後」など。著書に『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)がある。

 



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