活きたキャリア教育で見える
ブラック企業の実態!
―― 若者の労働問題として「ブラック企業」が注目されています。あとで後悔しないために、その見極め方を教えるということは?
沢田 大学のキャリア教育はそもそも、学生を就職させるためのものでした。適応教育や適応支援というんですが、企業社会が求める人材像を説明し、だからあなた方もそうなりなさい、と。いまだにその手の授業が主流です。
けれど、「ブラック企業」の問題が大きくなり、適応だけではなく、抵抗や変革の側面も併せ持たなければならない、という声が高まっています。ただし、そういった授業をやる教育は企業社会の負の側面を強調しがちで、真剣に教えるほど、肝心の学生が下を向く。「働くのって嫌っすね」「自信がないっす」と思わせてしまう。いわゆる労働教育は、教え方がとても難しいんです。
わたしは授業で、とある物流会社の人事担当者にブラックトークをしてもらったことがあります。「僕は採用のときに勤務時間は9時から17時と説明していますが、実態は朝8時前に出社、帰りは平均で23時か24時ぐらい」「ちゃんと払ったら大変な額になるので、残業代は申請してもらわないようにしています。申請があっても、その数字を改ざんします」といった話。
学生にはリアルブラックを体感してもらいたかったんです。どんな仕事でも大変なことはあるし、それを乗り越えないと成長できない。それは大切なことだ。しかし、どこかで線引きしなければ自分が潰れてしまう。この会社は一線を越えた例だろうね(笑)と。
活きたキャリア教育をどう実践するか。これはわたしにとっても大きな課題です。
(本コラムは、「大学図鑑!2014」からの抜粋です)
沢田健太(さわだ・けんた)
民間企業で営業職や人事職に従事。その後は、教育分野に転身。複数の大学にて、キャリア形成支援に携わる。現在の主な関心ごとは、「就職と若者の不安」「正解を求めようとする就職活動生の意識」「大学におけるキャリア教育の今後」など。著書に『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)がある。
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