西武ホールディングスと筆頭株主のサーベラスとの関係が、再上場問題を機に修復不能となっている。両社の対立の根幹には何があるのか、幾重にもわたる交渉の積み重ねを一枚一枚剥がすことで明らかにする。(本文敬称略) (「週刊ダイヤモンド」 西武再上場問題取材班)

伏線 「2400円で再上場を」

 1年前の2012年3月21日。西武ホールディングス社長の後藤高志は、米ニューヨークにいた。海外出張の折に、投資ファンドで筆頭株主であるサーベラスCEOのスティーブン・ファインバーグを表敬訪問したのだ。

 その席で後藤は、思わぬ言葉を耳にする。「(公募価格は)1800~2400円で再上場してほしい。それ以下ならやめてくれ」。

 具体的な株価の言及に驚いて「それはできない。株価はマーケットが決めるもの」と返すと、気が短いことで知られるファインバーグは気色ばむ。その場は何とか収まったが、後味の悪さが残った。

 当時、西武は再上場の手続きに向け、最終準備に入っていた。有価証券報告書の虚偽記載で旧西武鉄道が上場廃止となったのが04年12月。主力銀行のみずほコーポレート銀行(CB)副頭取だった後藤が再建のため、西武鉄道の社長に就いたのが05年5月。過去の経緯、7年の歳月を鑑みればより慎重にならざるを得ない。これ以降、警戒感を抱いた西武経営陣はあえてサーベラスとの接触を避ける。

 それまでの西武再建は、サーベラスとの友好的な関係の下で進められてきた。信用失墜で倒産の危機にあった西武が純粋持ち株会社設立によるグループ再編や、資本増強を公表したのは05年11月。サーベラスは、増資の入札に応じた27社の中から選ばれた。