最新の高性能スマートフォンに搭載されるプロセッサの最小注文単位はどれくらいかご存知ですか?

 おそらく1000万枚ぐらいでしょうか。100万枚で製造を請けてくれるところはないでしょう。

 プロセッサは半導体の集積回路として作られますが、集積回路の最小加工寸法のことをプロセス(またはプロセスルール)と呼びます。このプロセスが細かいほど集積度が上がりますし、集積回路の駆動速度も早くなりますし、駆動電圧も小さくなります。スマートフォンの場合、プロセスが細かくなれば機能が増えるし、動作性能も良くなるし、電池持ちも良くなります。だから、スマートフォンメーカはなるべく細かいプロセスのプロセッサを搭載したいことになります。

工場ひとつで1兆円

 いまのスマートフォン向けプロセッサのプロセスは32nm幅が主流です。iPhone 5に搭載されているApple A6も32nmとされます。今年は28nmプロセスに移行していくでしょう。問題は28nmや32nmのプロセスの半導体回路を製造できる工場の設備投資額が上がっているのです。以下、金額などは業界的にささやかれている相場観なので、だいたいの数字と思って読んでください。

 さて32nmプロセス向け工場は5000億円以上。28nmプロセスに至っては1兆円近いといわれます。例えば半導体は回路を表す写真乾板から、写真の焼き回しのようにシリコンに転写しますが、この転写装置、正しくは半導体露光装置と呼びますが、20nmクラスになると1台で100億円程度。桁違いの費用がかかるのです。だから枚数を作らないと半導体工場はペイしませんし、特に製造する半導体回路の切り替えはコストがかかるので、一つの半導体回路、つまり一つのプロセッサをたくさんつくる必要があります。

 さてAndroidでもiPhoneでも英ARM社の設計をベースとしたARM系のプロセッサを搭載しています。そのARM系プロセッサを設計する会社は半導体工場は持ちませんから、TSMCなどのファウンドリ、つまり半導体製造を請け負う会社にプロセッサの生産を委託します。ファウンドリとしては工場の設備投資に見合う受注量というと、これも業界における相場観ですが、月産100万枚近い生産が必要ですし、生産委託を受けるにしても一回の注文で1000万枚以上でないと請けられないでしょう。