山口 そこまでされたら、精神的に参っちゃいますね。

家入 正直、ちょっとパニックになりました。それまでも批判を受けることは色々ありましたが、基本的には僕が考えたものを気に入った人だけが利用してくれればそれでいい、と割り切っていたのです。

 自分の顔を広告塔として提供する「顔面広告」などと同じく、もともと「studygift」のコンセプトは「自分を切り売りする」ことでした。学費に困っている学生のほうは自分のプロフィルをさらけ出し、それを見て応援してあげたいと思った人が寄付をするわけです。ただ、「顔面広告」は受け入れられても、「studygift」のほうは人間の倫理観も関わってきて、それで炎上してしまった。以来、ちょっとマジメになりました。自分を切り売りすることが社会に与える影響というものも考えるようになったり…。

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山口 きっと、家入さんの場合はアンパンマンの顔と同じ感覚で、自分を切り売りして差し出しても、いくらでもスペアがあるんですよ。だけど、普通の人は切り売りするとどんどん自分がなくなってしまうから、恐怖感や嫌悪感も手伝って、そこまでの騒動になったのかもしれない。要するに、自分のアイデンティティに対する認識の幅が狭いわけですよ。

家入 そういうことなんでしょうかね。

山口 僕が思うに、ここ50年ぐらいの歴史の中で、人は社会とか世間によって、自分というものの範囲を狭めてきたんです。だから、特に日本ではプライバシーがどんどん尊重されるようになりました。だけど、米英には自分のプライバシーをさらけ出して生きている人がいっぱいいるし、僕の友人なんてグーグル・カレンダーを通じて自分のスケジュールを誰にでも公開しているんですよ。

家入 思い切ってますね。僕も似たようなところがあるけど。

山口 彼の夢は「即身成仏」なので(笑)、もうこの世には生きていないって感覚なんです。

家入 実は、自分の今の居場所をネット上でつぶやく仕組みを作りたいと思っていたところなんです。もはや、リアルな自分かどうかなんて、曖昧です。何年か前に、「セカンドライフ」というゲームが流行りましたよね? 僕はあれを見て、とてつもない可能性を感じたんですよ。あれなら足の不自由な人だって、ゲーム上では自由に走り回ることができます。3Dのバーチャルが最終的な答かどうかはともかく、何かのヒントが見つかったような気がしますね。

山口 いわば、人と人との関係やコミュニケーションだけがリアルってことですか。なるほど。今日は非常に貴重な結論を導き出せた気がします。本当にありがとうございました。

次回は4月9日更新予定です。


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